未来のために今日行動するということを考える
「社会運動」という書籍をご存じでしょうか?
生活クラブ生活協同組合グループ全体のシンクタンクである、一般社団法人市民セクター政策機構が発行する季刊誌です。
この夏、2025年に発行された「未来のために今日行動する~ウェールズ発『未来世代のためのウェルビーイング法』ができるまで」という書籍についての書評を書く機会を得ました(夏休みの宿題のような・・・)。
そして、第三回定例会の一般質問では、ウェールズの未来世代法を紹介しながら、その手法を参考にして総合計画を策定することを求めました。
未来世代法はウェールズ自治政府の法律
本書は、2015年にウェールズ政府が可決した「未来世代のためのウェルビーイング法(総称「未来世代法」)」が制定するまでの記録を、未来世代法制定をけん引したジェーン・デイヴィッドソン氏が著したものです。
この法律は、世界で初めて、今を生きている世代とともに「これから生まれてくる」未来世代の権利を明記し、政府や公共機関に対して、政策を立案・施行する際に未来世代のウェルビーイングを考慮することを義務づけています。「豊かさ」「平等」「協働」など七つの目標を達成するための指標が50あり、「長期的視座」「市民の関与」「予防」など五つのやり方も定められています。さらに、政府から独立した「未来世代コミッショナー」という役職が設けられ、法に則った施策が推進されているかチェックする機能、勧告する権限を持っています。
英国はイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドという4つの国が構成する連合王国で、イングランドを中心とする議会制度が国家全体の政治運営の中核を担っています。1998年の分権改革によってウェールズには独自の議会と政府が設けられ、2011年の住民投票によって議会には本格的な立法権限が与えられました。その結果、教育、保健、交通、環境政策など多くの分野で独自の方針や制度を策定し、実行に移すことが可能になっています。
ウェールズの未来世代法は人口約310万人のウェールズ自治政府の法律です。
著者は、幼少期を過ごしたジンバブエ(当時はローデシア)で人種差別を目の当たりにします。7歳の時に気づいた「社会の価値観の間違い」が人種や文化、信条に関係なくすべての人を公正に尊重する両親の教育によるもので、それ以来、自身の価値観の中心になります。また、14歳で帰国した英国での消費主義に大きなカルチャーショックを受けます。ものに限りがあり粗末にできないアフリカでの原体験から使い捨て文化を憎む心が芽生え、それがのちにウェールズの廃棄物ゼロ政策への情熱につながったそうです。
さらに、1992年のリオデジャネイロ開催の地球サミットで178か国が合意した約束「アジェンダ21(21世紀に向けた持続可能な開発のためのグローバルな行動計画)」に影響されたとのことです。社会平等と環境という著者の二つの大きな情熱が初めて一つになり、人生をかけるべきものと確信したといいます。
ウェールズの未来世代法がもたらした変革
2025年10月30日付の朝日新聞によると、未来世代法によって、新たな高速道路の建設中止、公共交通機関への投資の増額、自転車専用道路や歩道の整備、廃棄物の再利用や生ごみの堆肥化が進み、2050年ごみゼロの目標の早期達成などが紹介されています。また、グテーレス国連事務総長をはじめとする、持続可能な社会の実現に関わる人たちの間では注目されており、世界各国でも同様の法律をつくる動きが進んでいるそうです。
日本では、2023年に京都に本拠地を置くNPO法人「未来世代のための市民委員会」が設立され、未来世代法成立に向けて啓発や政策提案に取り組んでいます。
災害級の夏の暑さや頻発するゲリラ豪雨など、気候危機は命の問題であり、未来世代がより多くの被害を被ることになります。
国は、地方自治体に対し、2015年の国連サミットで採択された 「SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)」を原動力とした地方創生の推進を求めています。練馬区の行政計画に掲げられた主要施策にもSDGs17 のゴールのイラストが記載されています。しかし、多様な市民による時間をかけた対話から生まれた未来世代法と違い、国からの支持によって振り分けられたものであると感じています。
未来世代の権利もないがしろにしない政策実現のためには、私たち自身が社会を変える一員であることを自覚し、システムチェンジによる変革のしくみをつくり、一刻も早く真剣に取り組まなければなりません。
本書の書評を書くという、「社会運動」からの宿題によって、新区長のもとでこれから総合計画を策定する練馬区において、未来世代法の理念と施行までの道のりを参考にすることを要望、提案しようという考えに至りました。良いタイミングで本書に巡り会えたと思います。
ぜひ、皆さんにも読んでいただければと思います。

