住宅地の陥没事故から6年~外環(関越~東名)の現状~

「地下40mより深い空間(大深度地下:だいしんどちか)には地上の所有権が及ばず、公共目的であれば使用できる」とされる大深度地下法に基づき、(当初)「地上には影響を与えない」(記録にはどこにも残っていません)と強引に進められてきた東京外環道(関越~東名)工事。

沿線住民からの振動、騒音の訴えにも応じずにシールド工事を進めた結果、2020年10月18日に調布市内の住宅地に陥没事故が発生しました。それから6年が経過し、本線トンネルを掘削する4基のシールドマシンのうち3基が停止している状態です。

練馬区から世田谷区までの沿線各地で東京外環道の問題について活動する住民団体や住民訴訟の弁護団をはじめとする支援団体など、14団体の連名による「住民無視・人権侵害、杜撰で、無駄遣いの東京外環道工事の中止を! ―陥没事故から6年、事故の記憶を風化させず、政策、計画の転換を求める」声明が公表されました。


2026年10月18日

(声明)住民無視・人権侵害、杜撰で、無駄遣いの東京外環道工事の中止を!
―陥没事故から6年、事故の記憶を風化させず、政策、計画の転換を求める

  外環ネット外13団体
(連絡先:info-gaikannet@gaikan.net)

2020年10月18日、日曜日の正午過ぎ。私たちが見ている前で、道の真ん中で始まったひび割れが拡がり、ドーンという鈍い音とともに道路が陥没。縦横深さ約5mの大きな穴が開きました。……それから6年経った今、陥没現場はどこか分からなくなりました。道に出て遊ぶ子どもたちの声が聞こえた調布市東つつじヶ丘 2丁目の住宅街は、家と共にコミュニティが壊され、終の棲家とする高齢者が多い周辺住民は、 既に約50戸が転居、街を去りました。街はいま、白い塀で囲まれた「工事現場」 になったままです。事故を起こしたシールドマシン(北行)と並行しているもう1基(北行)は、周辺の地下47メートルに停まったまま。 地上では2 年で終わるはずの陥没空洞で緩んだ「地盤補修工事」が延々と続いています。

地下40メートル以深に直径16mの巨大トンネル2本を掘削する東京外環道の本線工事は、東名ジャンクション(JCT)発進の2 基と、大泉JCT発進の 2 基、計 4 基のシールドマシンによって行われています。しかし、東名発進のマシンは、陥没事故と、東京地裁の工事差止仮処分決定で、6 年間停まったまま。大泉発進の2基のうち、南行線マシンが、練馬区の青梅街道わきで2026年1月突然停止。調べてみると、なんと心臓部である回転機構の直径 約8メートルの大ギアやベアリングが損傷。大ギア全周の23個所と、3種類、約1000個のベアリングのうち 7 割が破損していました。4年前の地中壁鋼材衝突事故が引き金になったとの損傷の推定原因には疑問が残ります。この結果、今では本線マシン4 基のうち 3 基の掘進が停止中です。

なぜこんなことになるのか? 問題の本質は、「地上に影響が及ばない」「通常使用されてない地下」と偽り、大深度地下法により、憲法の財産権も無視して、地上の土地権利者の了解を得ることなく、また、地質調査など環境アセスは杜撰で、掘削技術も管理体制も不十分なまま、未完成の気泡シールド工法などの巨大なシールドマシンを用いて、大きな土水圧の地下深くのトンネル掘削工事を進めていることにあります。

明らかに工事が頓挫しているにもかかわらず、国土交通省関東地方整備局・公共事業評価監視委員会は2025年10月、5年毎の事業再評価を行い、事業継続を承認しました。事業費は、100億円は優に超えるとみられる陥没被害補償や地盤補修工事の費用を除外するなどして、陥没直前の前回から約4000億円増に抑えても2兆7625億円(当初の約2.2倍)に増加。費用対効果比(B/C)は、「時間短縮効果」に関東一円の道路を含めて、さらに事業完成年度を実現不可能な2030年度のままとするなど、効果を水増しし、個別評価のB/C は 1.2 (新たに導入した一体評価は4.4)と算出しました。

事業者側は、この建設工事費用がすべて最終的には 「高速道路保有・債務返済機構」 の政府保証債で賄われることをいいことに、住民の平穏生活権の侵害を隠蔽しながら杜撰で無駄使いの事業を漫然と続けています。

一方、この事業の承認・認可の無効、取消を訴えた訴訟は、2017年の提訴以来間もなく 9 年目を迎えます。ところが、事業者側(国と東日本、中日本のNEXCO 2 社)は、「大深度法は違憲。住民の平穏生活権侵害を認め、工事を中止し、対応策を取れ」という要求はもとより、住民の健康、生命への侵害を認め、工事の一部差止めを命じた仮処分(東京地裁―高裁―最高裁)決定にも、反論さえせず、住民をも裁判所をも愚弄した態度を続けています。

陥没地域周辺の住民は、陥没前も、陥没事故後も立退きや地盤補修工事により、振動、騒音、低周波音のほか、不安と落ち着きのない生活を強いられ、不定愁訴や自律神経失調などの体調不良や、持病の悪化を招くなど、豊かで健康な精神を保ち、安全で平穏な生活を保障する平穏生活権をはじめ、「人間の尊厳」を傷つけられる環境にさらされています(「外環陥没関連障害・死」)。
同様に、調布陥没以後に工事再開された練馬区(2025年)や杉並区(2026年)の本線工事や中央JCT南側ランプトンネル直上の住民は、振動、騒音、低周波音健康被害を受けています。しかし、これらの被害実態は環境省に報告されておらず、2026年6月の公害被害者総行動における被害防止の要請に、環境大臣から今後被害情報の収集を行うとの答弁を得ています。

いま、東京外環道トンネル工事やリニア新幹線建設などのシールドマシン使用の大深度地下工事では、調布陥没事故などに類する事故や騒音・振動・低周波音健康被害が続出しています。これ以上、調布の惨事を繰り返させてはなりません。私たち外環ネットなどは、 調布陥没事故から6年を迎え、記憶の風化と記録の隠蔽に負けることなく、国とNEXCO2社(東日本と中日本)からなる外環事業者が、現場の実態と事業を直視し、政策、計画の転換、すなわち、東京外環道事業を直ちに中止することと大深度地下法を廃止することを、改めて求めるものです。

以上

賛同団体(順不同)計14団体: 外環ネット/とめよう「外環の2」ねりまの会/元関町一丁目町会外環対策委員会/ 外環道検討委員会・杉並/外環を考える武蔵野市民の会/市民による外環道路問題連絡会・三鷹/外環道路予定地・住民の会/調布・外環沿線住民の会/野川べりの会/外環道検討委員会/外環いらない!世田谷の会/東名JCT近隣住民の会/東京外環道訴訟原告団・弁護団/東京外環道訴訟を支える会