環境破壊と新興感染症~環境行動連絡会講演会より~

新型コロナウイルス感染症が報じられて3年目。
連日、区立学校や保育園など子どもたちの感染者数の報告があり、なかなか収束の見通しがたちません。

この間、新しいウイルスに世界中が翻弄されてきました。

2月5日、「環境問題とパンデミックとの関連を解き明かす」として区民環境行動講演会「環境破壊と新型感染症」が開催されました。
講師は、共同通信編集委員の井田徹治さん。井田さんは、マイクロプラスチックによる海洋汚染やエネルギーなど環境と開発の問題を長く取材し、発信されている方です。

動物由来の感染症の拡大

新型コロナウイルスによる感染症は、コウモリから始まった可能性があるということをご存知の方は多いと思います。
動物由来感染症(動物から人に感染する病気の総称)は、世界保健機関(WHO)が把握しているだけでも200種類を超えていて、人間の感染症の70%は動物由来だそうです。

なぜ、動物由来の感染症が拡大しているのでしょうか?

端的に表現すると、人の暮らしと野生動物が接近しているから
そこには、環境破壊が大きく関与しているのです。

森林伐採や地下資源の採掘などのために、カンボジアやマレーシアなどの東南アジア、南米のアマゾン、アフリカのコンゴ川流域などの熱帯林の森林破壊が急速に進んでいます。
・食糧生産ための農地開発や放牧
・天然ゴムやパームオイル採取のための単一栽培(プランテーション農業)

開発のための労働者が野生動物の生息域に接近
労働者の食糧確保のために野生動物(ブッシュミート)を捕獲

防護服などほとんどない中で動物の血液や体液に接触し、未知の病原体に感染する可能性が拡大する

地球温暖化が感染症の拡大に関連

気温上昇+降水パターンの変化でできる大きな水たまり(水が引かない)や農地拡大による過剰な灌漑(かんがい)で感染源となる「蚊」の大量発生
地球上でいちばん危険な動物は「蚊」と言われている・・・
「蚊」がもたらす命の危険⇒マラリア、デング熱、日本脳炎、西ナイル熱などの熱帯感染症

コウモリなどの哺乳類の分布域が拡大⇒動物由来感染が増える

地球環境問題と日本人の暮らし

総合地球環境学研究所の研究より
日本人の消費の中で森林破壊量が多いもの
パーム油:インドネシア
大  豆:ブラジル
綿、ゴマ:タンザニア
コーヒー豆:パプアニューギニア、ラオス
日本の消費者は、年間で一人当たり2.22本の森林を伐採
そのうち2.07本が海外の森の木(2015年⇒2001年は1.59本だった)

専門家の警告

・家畜増など、生態系破壊は病原体の格好の「えさ場」
・単純化した生態系が病原体を増やす(生態系が豊かであればバランスが取れる)
・「パンデミックをもたらす消費(熱帯からの木材、パーム油、鉱物資源、エキゾチックペットなど)」の削減を
・唯一、責任のある生物種は人間である

コロナ収束後の世界

一刻も早く、新型コロナ感染症の収束を願うところですが、「元の世界に戻る」ことが良いのでしょうか?
「元の世界」とは、
気候変動や生物多様性、単一農業(プランテーション農業)や開発による環境破壊、都市部の過剰な集中、弱者にしわ寄せがくる「格差と貧困」などが解決しない世界です。

責任のある生物種である人間である私たち自身が知恵を働かせ、具体的な行動が必要です。
ワンヘルス(One health)
人と動物の健康と環境の保全を担う関係者が緊密な協力関係を構築し、分野横断的な課題の解決のために活動していこうとする考え方
グリーンリカバリー
「CO2排出ゼロ」をめざした成長戦略をつくるなど、パンデミックからの社会的、経済的復興に投入する税金を「より良き復興(Build Back Better)」のために使う
自然に基盤を置いた解決策(Nayure based Solution)
森林や藻場の保全でCO2収集増大、自然エネルギーの活用、肉食から植物由来へ、自然のダム(森林)の活用などなど

根本的な変革が急務

<消費者>求められるライフスタイルの変革
コンビニ・自動販売機文化からの脱却
ペットボトルから水道・公共飲料へ
化石エネルギーから再エネへ

少しでも影響の少ない製品・企業を選択、影響を減らす行動を
対策を求めて声をあげよう

持続可能な開発目標SDGsでは、17項目の目標を挙げていますが、
4.安全な水とトイレを世界中に
13.気候変動に具体的な対策を
14.海の豊かさを守ろう
15.陸の豊かさも守ろう
の、生態系保全に関する4項目がすべての基礎にあるということを「根本的変革への視点」として忘れてはならないとのことでした。

諸事情により会場の雰囲気を伝える写真を載せられないことが残念ですが、参加者は熱心に聞き入っていました。
井田徹治さんのお話、機会があったらぜひ、聞いてみてください。

会場の様子や井田さんの写真の掲載はNG。バナーの撮影だけ許可が出ました。