重要土地等規制法、9月全面施行を前に

米軍基地や自衛隊施設周辺を「注視区域」「特別注視区域」に指定し、個人情報を収集、土地・家屋の利用・売買を規制する「重要土地等規制法(以下、土地規制法)」が9月から全面施行(6月に一部施行)されます。

練馬区大泉学園町に所在する陸上自衛隊朝霞駐屯地は「特別注視区域」に指定されるとも言われていて、私はこれまで、土地規制法の施行が私たちの暮らしにどのように影響するか懸念する区民と共にピースウォークや学習会に取り組んできました

7月20日、陸上自衛隊朝霞駐屯地、航空自衛隊入間基地、米軍横田基地、米軍所沢通信基地、米軍大和田通信所(新座市)周辺に在住し、反戦・平和の活動に取り組む市民と土地規制法に関心を寄せる方々とで各地域の活動などを情報交換し、今後どのように取り組んでいくかを話し合いました。
主催は、重要土地等規制法を憂慮する練馬区民の会。

病院も注視区域の対象に

所沢市議会では「通信基地のほかに防衛医科大学校および防衛医大病院も注視区域に指定される可能性がある」と質疑されていることがわかりました。

他にも、「自衛隊の通信基地も対象になると考えられるが、一見、基地の施設とは思えないような建物なので住民はわからないのではないか」と三芳町からの参加者が発言しました。

「調査」の手法は問題だらけ

誰でも、どこでも調査の対象となり得る
⇒「重要施設」も「調査項目」も「阻害する行為」も、すべて内閣総理大臣の一存で決められる

「生活関連施設」も「重要施設」に
⇒生活関連施設とは、原発、ダム・貯水池、空港・港湾、官公庁施設、放送局、金融関係施設、駅・鉄道施設、電気・ガス・水道事業施設・・・などなど

どこで何を調査されているのかわからない
⇒「土地建物の利用状況」にはなんでも含まれ得る。調査対象は土地・建物ではなく市民

知らない間に個人情報データベースが作られる
どんな個人情報が、どんな理由で提供されるのか、本人にはわからない

⁂防衛に関する情報収集(諜報)および保全(防諜)を任務とする「自衛隊情報保全隊」が、2007年の自衛隊のイラク派遣に反対していた市民団体や政党など、全国289の団体・個人の情報を収集。隊が作成した文書は、反対集会やデモに関する発言内容や規模などが詳細に記録されたほか、集会参加者も撮影されていた。と報道されています。

個人情報保護法の改正とあいまって・・・

昨年3月の個人情報保護法の一部改定に伴って、自治体の個人情報保護条例の改定(廃止)がすすめられています。(「個人情報保護条例」を廃止し「個人情報保護法施行条例」を制定)
国の個人情報保護委員会から、保護法の規程を条例に適用しなければならない、独自判断は認めないという文書(ガイドライン)が出されるなど、地方分権を否定し、今まで厳しい基準で運用されていた個人情報保護が後退するのではないかと懸念されています。

重要施設の施設機能及び国境離島等の離島機能を阻害する土地等の利用の防止に関する基本方針【案】」の「個人情報の保護」に関する記述を見ると、
収集した個人情報は、内閣府が一元的かつ適正に管理する
必要な情報漏えい対策を講じるなど、厳格な管理を徹底する
という表現であり、「現状では、公的機関に対する個人情報保護委員会のチェックは非常に弱く、内閣府による一元的な管理は、個人情報保護を危うくする」と専門家は指摘しています。

また、
公簿以外に「現地・現況調査」や「報告の徴収等」を組み合わせることで、個人のプライバシーの侵害になりかねない
「必要に応じて」の「必要」を厳格に明示的に規定すべき
思想・信条等に関わる内容が含まれている任意団体や個人のホームページ、ブログ、SNS 等からの情報収集は行わない旨を明記すべき と指摘しています。

法律の運用に関与する事業者に周知されていない

特別注視区域の指定を受けたエリア内の土地・建物の売買などにおいて、締約前に届出義務(罰則付き)があります。また、この規制については、宅建業者が顧客に対して締約前におこなわなければならない「重要事項説明」の対象となります。
しかし、重要土地等規制法を憂慮する練馬区民の会が聞き取り調査をしたところ「ほとんどの地元宅建業者は知らない」状況だったとのことです。

土地規制法の基本方針案に意見を送ろう

7月26日、政府は土地規制法に関する意見募集を開始しました。締め切りは8月24日です。
土地規制法の問題点や意見募集に関する詳細はこちらを参考にしてください