コミュニケーションが人を育てる「学びの場」を見学
発達障がいや知的障がいの方が、高等学校や特別支援学校高等部を卒業した後の進路の選択肢である「More(モア) Time(タイム)ねりま(以下、モアねり)」を訪問し、学生の活動を見学してきました。
モアねりは、「福祉事業型専攻科」として障害者総合支援法に基づく福祉サービス事業を利用し、「学びの場」として機能させている事業所です。
当初は、高校卒業する年代の人を利用対象と考えていたそうですが、2019年4月の開所時の新卒者は1名。当時の学生9名の年齢は、18歳から42歳でした。
学校を卒業し一旦は就労したものの、継続が困難で離職したり、そのままひきこもってしまった方の利用が少なくないそうです。
開所当初は、学生同士のトラブルが絶えなかったそうです。
教育や就労の場における心無い言葉や肉体的な暴力によって自尊心を傷つけられ
自己肯定感が低くなる
自分に自信が持てない
コミュニケーション不足で人間関係がさらに悪くなる
人を信じられないところまで追い込まれる
このようなことが原因と考えられる、と運営するNPO法人理事の永田さんはお話しくださいました。
問題解決のために、法人スタッフは徹底して学生たちの声を聞き取り、まるごと受け止めることに努めたそうです。半年くらい経過したころから落ち着いて活動できるようになったとのことです。
モアねりは、本音で語り、自分を作り直す場所
たった半日の見学でしたが、何事も一人ひとりの意思を確認し尊重して進めていること、また、合意形成のために学生さんたちが活発に意見交換している様子を目の当たりにしました。
発達や知的な課題がある子どもたちは、ゆっくりと成長していく時間が必要であり、高校(高等部)卒業後にすぐ就労するのではなく、安心できる場所で仲間と共に学び合う時間が人格形成や生き方に大きく影響すると永田さんは言います。
現在の運営形態は、利用期間が原則2年(1年延長可)の「生活訓練事業」にあたるため、利用期間終了後の活動の場「学びながら働けるB型就労」の創出を模索しているとのことです。
また、「働かない選択肢」もあるのではないか、と永田さんは問題提起しました。
さらに、通常学校の居心地を良くすることが必要である、と。
それは、(単に)支援員を増やすということではなく、教育内容を見直し、障がいがあってもなくてもすべての子どもが認められ、自分の言葉で話し、相手のことも認められる信頼関係を築くことではないかと思います。大きな宿題です。
モアねりの活動プログラム終了後に同じ場所で運営される「i-LDK(Inclusive Learning Diversity with Kitchen)(アイエルディーケー)」は、生涯にわたって当事者が主体となって多彩な「学び」の機会を作る活動です。モアねり卒業後も利用可能で「相談できる場を持っている」という自信につながっているとのことです。
学校や職場、暮らしの中の不満や生きづらさなどのストレスが、より弱い立場に向かっている現状を変えていきたい。あらためて感じています。