広告は政治を支配する道具

「原発プロパガンダ」「メディアに操作される憲法改正国民投票」「広告が憲法を殺す日」などの著作者、本間龍さん。
一度、直接お話を伺いたと思っていたところ、練馬で本間さんを講師に迎えた講演会が開催されると知り、心待ちにしていました。

2月22日に開催された、「広告が憲法を殺す?巨額広告費が国民投票を操作する」と言うテーマのお話は、期待に違わず大変興味深いものでした。

現行国民投票法は広告し放題

憲法改正(「正」は使いたくないが)するためには、国民投票を実施しなければなりません。
国民投票法にはさまざまな問題点が指摘されていますが、広告を規制する条項がほとんどないのが最大の問題点だと本間さんは指摘しました。
改憲の賛否について、さまざまな調査をしていますが、いずれも、いわゆる「改憲派」「護憲派」はそれぞれ約3割。残りの4割の無党派または「意見未決定」の層をターゲットに、大量の広告で「改憲賛否」の判断材料を提供する(刷り込む)ことが可能だからです。

現在の状況に当てはめると、「『安倍晋三』というアイコンを掲げた改憲派の与党である自民党が、豊富な政党助成金に加えて経団連や改憲支持団体などから莫大な寄付金を受けていくらでも広告に投入できる。それに対して護憲派を構成する野党は資金量の面で圧倒的に見劣りする」と本間さんは言います。

メディアへの賄賂の顔を持つ広告費

メディアの全収入に対する広告依存率はどれくらいか。
新聞、30~40%。テレビ・ラジオ、70%以上。雑誌、60~70%。インターネット、80%以上。
「メディアも私企業であり、広告費が入らなければ倒産する。バブル崩壊後、日本のメディアの大半は営利第一主義となり、巨額の広告費を払うスポンサーに対して卑屈になり、忖度するようになった」と指摘しました。

そして、メディアへの広告制作をはじめ、広告枠の確保(=収入確保)、クライアント(広告主)の情報・危機管理(不正やリコールのような不祥事など)をするのが広告代理店の役割。広告代理店なくしてメディア経営は成り立たないと言っても過言ではないと感じました。

国内では、電通と博報堂が大手広告代理店といえますが、電通は、広告業界におけるシェア約4割の圧倒的ガリバー企業で、対抗馬は存在しないのだそうです。
昨年のワールドカップラグビー、今年の東京五輪をはじめ、大阪万博、札幌冬季五輪も電通が仕切ることが、今から決まっているとのこと。

憲法改正、国民投票に及ぼす「広告」の影響力の大きさに呆然

企業の広告が大きく掲載されている日の新聞紙面には、その企業の不利益になるような記事は載せない、あるいは、目立たない面にするなどの「忖度」があるのは、その筋では常識とか。
「圧倒的な量の広告出稿で浮遊層を幻惑」+「莫大な広告費を背景にした報道への圧力」=「メディアの忖度による報道自主規制を発生させる」
これが、現代における広告の「力」だ、と本間さん。
ワイドショーなどでの取り上げ方、討論番組での印象操作、新聞記事の公平性など、広告が及ぼす影響力に
絶望すら感じるほどでした。

改憲派のプロパガンダに対抗するには、
一刻も早く護憲派の中心(アイコン)の決定、メディア・広報戦略の構築開始、メディア戦略実行のための資金計画着手をすすめることと併せて、
広告や寄付を規制するような国投票法の改正(まさしく「改正」)が急務です。
約2年前に国民投票法の研究者である、南部義典さんを講師に学習会を開催し、国民投票法に関する公正な法整備等を求める意見書の提出など、自治体議会へのはたらきかけを検討しました。しかし
、「まずは改憲阻止」を優先と中断している状況です。
「各党合同による改正案の起草・提出」や「丁寧な国会審議」など、慎重に進められるべき「国民投票への道のり」が何でもアリの現政権の下では、強行されることも十分考えられます。
あらためて、国民投票法の整備の必要性を呼びかけることが求められていると感じました。

私たちは「政治は生活を良くする道具」と言ってきましたが、今回は「広告は政治を支配する道具」と実感した講演会でした。 

新聞やテレビの広告料や、掲載記事との関連の話もあり、新聞の見方が少し変わるかも