恵庭市「農福連携ネットワーク」~保健福祉委員会視察報告~

11月25日(水)保健福祉委員会で恵庭市を訪問し、農福連携ネットワークを視察しました。

恵庭市の農業

・農家数は減少傾向だが、専業農家は増加している。
・農業就業人口の65歳以上比率は40%。市全体の高齢化率28%と比較して、高齢化が顕著。
・大消費地である札幌市に近いため、収益性の高い「都市近郊型農業」が盛ん。
・地形的に平坦で気象条件が良いため、多種多様な品種を生産。
・花壇用苗物を中心に花き生産も盛ん。札幌大通公園で植栽される花の約8割が恵庭産。

恵庭市の障害福祉

2023年3月現在の障害者手帳所持者(重複除く)
身体障害者:2,783名 知的障害者:714名 精神障害者:499名 合計3996名で人口の5.7%
(農作業に参加するのは、主に知的障害と精神障害の方)

障害福祉サービス費 16億8,512万円 毎年6~7%増加している

障害者就労支援事業所数(2022年度)
就労継続支援(A型)1ヶ所
就労継続支援(B型)16カ所
就労移行支援    1ヶ所

農福連携ネットワークの設立

農福連携とは、障害者等が農業分野で活躍することを通じ、自信や生きがいを持って社会参画を実現していく取り組みです。

恵庭市では、農業分野における障害者等の就労促進の取り組みを推進することを目的に、2016年3月「恵庭市農福連携による障がい者等就労促進ネットワーク(通称:恵庭市農福連携ネットワーク)」を立ち上げ、農福連携を推進する活動を開始しました。

ネットワークの運営に関する規約の趣旨に賛同し、協力可能な農業関係者や福祉関係者を会員とし、情報交換、現地見学、職場体験学習、優良事例の調査、情報発信、シンポジウムなどの活動を行っています。現在は、農業者や福祉事業所、関係団体など16法人が会員。

農業者は、福祉事業所に農作業を依頼し、農場に障害者を受け入れるための環境を整備する
福祉事業所は、農作業を受託し、農場への送迎や障害者への作業の指導を行う
行政は、事務局として先進事例の調査や視察、シンポジウムなどのイベントを企画、マッチング支援を行う

作業内容の「見える化」

2019年3月、農福連携の普及に向け、恵庭市で成功した事例を集め「恵庭市農福連携成功事例集」を発行。
具体的な作業の手順や工賃、作業時期、難易度の目安などを掲載。作業が増えたり、工賃が変わったりするので必要に応じて改訂版を発行しています。
特筆すべきは、事例集の各作業にQRコードを掲載し、スマートフォンで読み込むことで作業内容を動画で見られることです。どのような作業なのか一目瞭然で、障がいがある方にも理解しやすいと思いました。

作業の見える化は、農業者と障害当事者、福祉事業所をつなぐツール。障害のある方だけでなく、農作業にあたるパートタイマーの方にも有益であると説明を受けました。

農福連携の成果と課題

農福連携の参加者が増えた
2015年度(試行時)3事業所96人
2016年度  4事業所957人
2018年度からは、参加する事業所も増え、会員の工夫により作業が拡大したことで参加人数は3,407と大幅に増加。また、2019年度には酪農との連携で4,546人とさらに増加(人数はいずれも延べ人数)

農作業の種類が増えた
2018年度 13作業種類
2019年度 22作業種類
2020年度 29作業種類

工賃が高くなる事業所が増えた

訓練効果が出てきている
体力、持久力など身体面での向上。意欲、集中力、持続力など精神面での向上。心の安定や社会性、自己理解など心理面での向上。体調管理など障害のある方にとって多くの好ましい変化がみられているとのことです。

福祉的就労から一般就労へ
福祉的就労としては、参加者や工賃、作業種類が増加しているので就労促進は進んでいる。しかし、一般就労については、農作業は年間を通して安定した収入が得られないことや、圃場までの通勤手段がないなどの理由で、就労促進はまだまだこれからの状況。

農業への就労については、課題も多く難しいとのことですが、農福連携に参加し、障害がある方が大きく成長することで、工場などほかの一般就労への可能性が大きく広がり、就労先での定着率が上がったとの報告も上がっているとのことです。

また、福祉事業所の利用者全員が農作業に参加できない場合、職員の配置などの課題があるとのことでした。

恵庭市の農福連携事業の担当課は、障がい福祉課・農政課・福祉課です。今回の説明者である障がい福祉課長の熱意を感じた視察でした。