誤った認識を広めたのは事業者ではないのか

外環トンネル工事、一部差し止め決定

1月23日から2月1日にかけて実施された説明会で示された「再発防止策」に基づいて、約1年半停止していた大泉ジャンクション事業用地内の「南行本線トンネル」のシールドマシンの掘進が2月25日から再開されました。

工事再開3日後の2月28日、2020年10月に陥没事故が起きた東京都調布市の住民らが工事差し止めを求めた仮処分に対して、東京地方裁判所は、東京外環本線の南側9㎞(東名ジャンクション~井の頭通り)の「気泡シールド工法」でのトンネル工事を差し止める決定を下しました。裁判所が「工事の違法」を認めたことは、「公共道路工事では画期的な決定」と関係者は述べています。

第一回定例会の質疑で、工事差し止めの地裁の決定を区としてどのように受け止めているのか質しました。

区の答弁
陥没は特殊な地盤条件下で発生したものであり、東名側のシールドトンネル工事は、現時点で具体的な再発防止策が示されていない状況で、これまでと同様に気泡シールド工法による工事を行えば陥没の危険性があることから差止が認められた。一方で、大泉側の申し立ては却下されており、陥没地域と地盤が異なり、危険性は認められないものと司法の場において判断されたと認識している。

『特殊な地盤』が陥没の原因としていますが、外環訴訟の弁護団は次の2点を指摘しています。
・「大深度地下利用調査会」の答申書では「土砂の取り込み過ぎによる地盤の緩みや地盤沈下の危険性」について地盤条件の限定なく記載されている
・2020年6月の東横・相鉄トンネル工事の道路陥没事故の報告書には『特殊な地盤』との指摘はない

説明会で示された「再発防止対策」は、中立な立場で良識ある複数の専門家が「信憑性は薄い」「問題が多い」と指摘する事故調査報告書に基づくものです。大泉側からの工事再開で新たな事故が発生するのではないかと不安を訴える沿線住民は少なくありません。

この質疑を受けて、質問した他会派の議員に対して
「根拠もなく誤った認識であたかも陥没が起こりうると言い広めることは問題である」と答弁したのです。

誤った認識を広めたのはどっちだ⁉

東京外環の事業開始前から、(地権者に断りもなく)住宅の真下に巨大トンネルを建設する工事について異論や疑問を持っていた沿線住民は、様々な学習を積み重ねて事業者に問題点を指摘してきました。事業者は一貫して「地上に影響なない」と、計画を強引に進めてきた結果、陥没事故が起こったのです。
陥没事故以降は、被害住民の方々も含めてトンネル工学、地盤工学、地質学、事故調査などの専門家、トンネル工事に携わってきた技術者の方などと連携してさらに学習を積み重ねています。そういった中で「特殊な地盤」という表現自体が学術的には何ら根拠を持たない不適切な説明だと指摘されています。

専門家の中には「基本的には外環道は建設すべき」と考えている方もいますが、その方でさえ、これまでの第三者性を持たない有識者委員会のあり方や事業者の姿勢、都合の良いデータしか出さない不十分な情報公開のもとで示された再発防止対策は問題であると指摘しています。

根拠もなく誤った認識を広めたのは「大深度の工事は地上には影響しない」と言い続けてきた事業者の方ではないでしょうか。