オリンピック関連経費の決算質疑より

現在会期中の練馬区議会第三回定例会は、2020年度決算審議の議会。
オリンピック・パラリンピックは延期になっても約600万円の税金が使われました。

大会が無かったのに必要だった消耗品とは?

支出額の約半分を占めるのが消耗品費。大会がなかったにもかかわらず、必要だった消耗品とは何だったのか?
予定していた聖火リレーなどに関わるボランティア用のユニフォーム(Tシャツや帽子など)、約1,000人分。延期された今年のイベントで使用する予定でしたが、新型コロナウイルス感染予防のためにイベント類は一切中止。しかも直前まで実施の可否が決まらなかったので、区内のスポーツ関連団体にボランティア登録をお願いしたとのことです。

感染症拡大のなか「機運醸成」は必要?

機運醸成イベント運営等委託料 1,640,470円
主な使途は、機運醸成用のオリンピック横断幕と練馬区100万人のハンドスタンプアートプロジェクトで集めた手形を基に作成した大会応援アート
応援アートは、区役所本庁舎アトリウムに掲示されていました。

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け、東京オリンピック・パラリンピックの延期が決定したのが昨年3月24日。その後もさらに感染症の拡大は止まらず、収束の見通しがまったく立たない中で、1年延期した東京オリ・パラが多くの反対の声を押し切って7月23日から始まり9月5日に閉会しました。

そもそも、「復興五輪」「フクシマはアンダーコントロール」酷暑なのに「温暖で理想的な気候」とプレゼンするなど、まやかしの発言で招致されたのが今回のオリ・パラです。

報道によると、2013年の招致時に東京都が示した開催経費の見積もりは総額7340億円でした。しかし、実際には1兆6440億円にまで膨らんだとされています。
負担するのは、東京都、国、大会組織委員会の3者ですが、都が負担する費用には自治体の独自財源で負担するものも含まれています。
区は「一自治体として練馬区の負担は当然ある」と。
2021年度予算編成では「財政が厳しい」とさまざまな補助金や助成金が削られたことを考えると、素直に容認することはできません。

また、1兆6440億円のうち公費は57%の9380億円になるとのこと。
これに道路整備など「大会関連経費」も合わせると、3兆円を超す見込みだとされています。
五輪公費9380億円あれば、医療ひっ迫を避けるための「医療機関・医療体制の充実」や困窮者支援など、もっと新型コロナ感染症対策ができたのではないか、全国の公立小中学校の給食無償化(年間約5120億円)が可能なのに、などと考えざるを得ません。

なぜ経費が膨張したのか、大会組織委員会と東京都、政府は、詳細な内訳を情報公開すべきです。
そのためにも、自治体での決算はしっかりチェックしなければならないし、区としても区民につけを回すことが無いよう求めてほしいと思います。2021年度決算でもチェックが必要です。

問題は経費だけではない

オリンピックの問題は経費だけではありません。近年の商業主義にまみれたオリンピックのあり方自体が問われています。

私たちは、プラごみ削減のために庁内に設置してある自動販売機の見直しを求めてきました。
最近では、20階の片隅にペットボトルのない自販機が設置されたり、マイボトル対応の給水器が設置されたりと、環境配慮の取り組みとして少し前進したと感じていたところ、突然、新たな自販機がアトリウムに設置されたのです。現在でも、本庁舎だけで約30台、全区立施設の自動販売機の設置数は200台以上もあるとのこと。エネルギー消費の視点からも、削減すべきなのに新たに設置するとは容認できません。
当時「なぜ設置したのか」質問したところ、
練馬区内で行われる聖火リレーをお知らせするためには、スポンサー企業の自動販売機を置かなければ広報すらさせてもらえない
とのことで「商業主義の極み」と言わざるを得ません。
「すでにオリ・パラは閉会したのだから、速やかに撤去すべき」と指摘しました。
件の自販機は、契約が終わる9月末日で撤去されました。

オリンピック自体を見直す時期では?

1964年の東京オリンピック開催は、東海道新幹線や首都高建設などのインフラ整備が大きく進み、「戦後復興」を世界に示す非常に重要な役割を担った、など多くの人々にとって「成功」した記憶が語り継がれています。しかし、その影では、大きな不利益を被った人々も決して少なくなかったことが置き去りにされているのではないでしょうか。(新国立競技場建設のために強制的に退去を迫られた都営霞ヶ丘アパートの住人の中には、1964年大会ために移転させられた方がいらっしゃるということだ)

今回のオリパラ開催に当たっても、復興五輪といいながらオリンピックのための工事が被災地の復興工事の妨げになったと言われています。

また、招致時に掲げていた、選手村から半径8キロ圏内に競技施設の85%を集中させる「コンパクト五輪」の構想はどこでどう変わってしまったのか。

さらに、建て替えた国立競技場は大会後の運営形態が決まっていない上、年間維持管理費は24億円にのぼると言われています。
大会組織委員会会長の女性蔑視発言をはじめ、開会直前まで関係者の不祥事が相次いだこと、ボランティアの弁当や使用しなかった医療用マスク・ガウンなどの大量廃棄など、オリ・パラが終わったから「めでたし、めでたし」ではなく、負の遺産も含めて記録し、同じ轍を踏まないようにしなければならない。私はそう考えています。

自販機、カウンタダウンボードなどが撤去されてすっきりしたアトリウム

2019年10月の写真です。「2020.07.18」は、当初予定されていた区内の聖火リレーイベントの日。