「エネルギー基本計画」素案 示される

7月21日、経済産業省は「第6次エネルギー基本計画」素案を示しました。

「脱炭素」を理由に原子力発電の比率が引き上げられるのではないか、新増設が明記されるのではないか、と懸念していましたが、良くも悪くも(現段階では)明確な方向性は示されませんでした。

素案で示された2030年度電源構成案を見ると、これまで22~24%に目標設定されていた再生可能エネルギーは36~38%と前進したと考えられます。しかし、ヨーロッパの国々が掲げる目標(50~70%)に比べるとまだまだ低いと言わざるを得ません。

20~22%の現行目標を維持した原子力発電については、「温暖化ガスを排出しない『重要なベースロード電源』」と考えていること、これまでに再稼働や稼働申請した27基の原発をすべて動かすことが前提になっていて、2011年の東京電力福島第一原発事故を経験し、多くの人々が安全性を疑問視していることに応えていません。

「再生可能エネルギーと原子力を合わせて、6割を脱炭素電源でまかなう」計画という表現にも違和感を覚えます
再生可能エネルギーの普及が計画通りに進まなければ、原子力発電の比率を上げるのではないかという懸念も残ります。

報道によると、「素案」の決定は8月前半。その後パブリックコメント(意見公募)を経て「第6次エネルギー基本計画」が閣議決定されるとのことです。

国のエネルギー政策は自治体のエネルギー政策に大きく影響します。
2014年に策定された「練馬区エネルギービジョン」。生活者ネットワークは、「脱原発」を明記すべきと質してきましたが、国のエネルギー政策を追随するに留まっています。

7月11日、練馬・生活者ネットワーク主催の「終わりのない原子力災害』上映会&トーク」で、DVD制作に関わった国際環境NGO FoE Japanの吉田明子さんは、気候変動に対応する(カーボンニュートラル)ために徹底した省エネと再生可能エネルギーを主流とするエネルギー政策をすすめることが必要だと主張しました。

第6次エネルギー基本計画のパブリックコメントに、多くの方に意見を出していただきたいと思います

上関原発を建てさせない祝島島民の会の代理で署名提出

1982年に浮上した中国電力上関原発計画は、約40年にわたる地元の根強い反対運動によって実現されていません。
国会質疑では「原発の新増設は考えていない」としているのに、中国電力は2019年から建設予定地における海上ボーリング調査に乗り出し、山口県も許可を与えている状況です。

上関原発を建てさせない祝島島民の会は、第6次エネルギー基本計画策定に当たり、次期計画に「原発新増設」を明記せず、脱原発に舵を切ることを求めるオンライン署名を始めました。
コロナ禍で県境を越える移動が憚られる状況の中、首都圏で活動する「上関どうするネット(上関原発どうするの? ~瀬戸内の自然を守るために~)」のメンバーが代理で提出することになりました。

エネルギー計画素案が示される前日である7月20日に、立憲民主党の阿部知子議員の仲介で署名を開始した7月8日ら7月17日までに集まった9234筆の署名を経済産業省に手渡してきました。
オンライン署名は現在も継続していますので、ぜひ、ご協力ください。

原発問題は人権問題、原発は地域分断を引き起こす、環境を破壊し未来の子どもたちに負の遺産になる など原子力発電の問題は枚挙にいとまがありません。
署名提出の際、強く印象に残った上関どうすネットメンバーの発言を「『脱炭素』のためには原発が必要」と主張する人に考えてほしいと思います。
原発は常に海水より7℃も高い温排水を海に放出するものだから海水温が上昇し、それは気候温暖化抑止策に逆行するものではないか。

署名提出の様子は、上関どうするネットのフェイスブックの報告をご覧ください