デジタル改革関連法成立で自治体への影響は?暮らしはどう変わる?
国会で審議されていたデジタル改革関連6法案が5月12日に成立しました。
早速、条例改正が
区議会第二回定例会で「練馬区事務手数料条例の一部を改正する条例」が議案として提出されました。
これまで、練馬区の歳入になっていたマイナンバーカードの再発行手数料800円。
デジタル改革関連法成立によって、いわゆるマイナンバー法の一部が改正され、今後は地方公共団体情報システム機構(以下、J‐LIS)が徴収することになるので、区の手数料条例から削除する、というものです。
手数料条例が変わるだけ、という考え方もあります。
しかし、デジタル改革関連法によって、地方自治体が共同で運営している組織であるJ-LISへの政府の関与が高まること、自治体の情報システムを標準化し内閣府に権限を集中することによるさまざまな問題点が指摘されています。また、地方自治や分権に逆行すると言わざるを得ず、この議案には反対しました。
政権がめざすデジタル社会とは?
6月12日、元自治体職員で、プライバシー・アクション代表の白石孝氏の学習会「デジタル監視社会がやってくる!」に参加しました。
世界をみると、社会保障番号や納税者番号をベースにする申告型の個人番号制度と、住民登録をベースにする管理型に大別されるとのこと。日本は、管理型で市民監視のための制度ではないか、日本は中国をめざしているのか、と白石氏は指摘しました。
政府はデジタル改革の司令塔として9月にデジタル庁を発足させ、「国や地方自治体などの情報システムを統括し、重要なシステムについては国が整備。マイナンバー制度全般についても、企画・立案を一元的に担う体制を構築」などの基本方針を示しています。
先行する韓国やアメリカの例を見ると、マイナンバーと預貯金口座のひもづけをすすめる先には、個人情報の「プロファイリング」によるプライバシーの侵害、個人情報の大量流出、なりすまし被害などを懸念されます。
マイナンバーカードを健康保険証として使う「オンライン資格確認」は、「事務の効率化と過誤請求の縮減に寄与する」としていますが、特定検診の結果や医療情報を集積・連結し医療や薬、健康分野の産業と結びつける厚労省の構想とどうかかわるのか、非常にセンシティブな個人情報がどのように扱われるのか、国民には十分知らされていません。
情報クリアリングハウス理事長の三木由希子氏は、自治体独自の「個人情報保護条例」を「個人情報の利用拡大の障壁」と捉え、規制緩和を進めるのが本当の狙いではないか、と指摘しています。
今月開催された、「練馬区情報公開および個人情報保護運営審議会」では、デジタル改革関連法に関する区の対応について報告されました。
・個人情報保護法の改正により、個人情報保護条例の改正が必要になること。
・住民基本台帳事務、個人住民税、介護保険、国民年金、生活保護、児童手当など区がおこなう15業務について、国が作成する標準システムを利用することが義務付けられたこと。
複数の委員から、区と国の個人情報保護に関する制度の違いなどについて質問がありました。例として、公文書を公開請求する際の決定期間が区は15日に対して、国は30日であることや、死者の情報の定義が違うことなどの回答が示されました。区は、国から示される個人情報の保護に関するガイドラインも踏まえて検討を進めるとしていますが、全国的な共通ルールが規定されることで区民が不利益を被らないように注視していく必要があると感じました。
「マイナンバー」がない=住民登録がない人々
出生や国籍取得等で住民登録し、その住民票につけられる11桁の「住民票コード」を基に作られる12桁の個人番号がいわゆるマイナンバー。
日本に住むすべての人にマイナンバーは付いているでしょうか?もともと住民票があったが、登録自治体から届け出しないまま転居し、法に基づいて職権で登録を削除された人には付いていません。自治体情報政策研究所の黒田充氏は「50万人近い国民が、戸籍登録があり国内に住んでいるにもかかわらず住民登録がない」と推計しています。
そもそも、マイナンバー制度は、「社会保障と税制度の効率性・透明性を高め、国民にとって利便性の高い公平公正な社会を実現するための基盤」として始まりました。「真に手を差し伸べるべき方々に重点的に社会保障を提供する」という理念だったはずです。
コロナ禍は住民登録の有無に関係なく、感染のリスクがあります。ワクチン接種を感染防止対策とするなら、住民登録がない人にも等しく接種の機会が提供されるべきです。
ホームレスの方や難民認定中の仮放免外国人などへの対応を議会質問したところ、「申請があれば対応する」という姿勢です。「公平公正な社会」をめざすと始まったマイナンバー制度から5年以上経過していますが、社会のしくみは整備されているとは言い難い状況です。
政府がめざすデジタル社会形成の政策は、新しい公共事業として多額の税金が投入され、国家の管理・監視が強められ、個人のプライバシーの侵害の恐れがあり、問題だらけだ、と白石氏は強調しました。