「地区計画」は 住民と自治体が連携して進める「まちづくりの手法」

石神井公園駅南地区地区計画の変更議案に反対

今定例会の議案第111号は、放射35号線北町地区と石神井公園駅南地区において、建築物の最高高さなどの建築制限を定める条例です。

石神井公園駅南地区には、2012年に決定した地区計画があります。住民合意ののちに決定したその地区計画から、100メートルを超す高さのビルが建てられるようにするなどの変更は、関係権利者のみならず駅や公園利用者からも多くの疑問や意見があり、変更案通りに決定することは容認できないため反対しました。

以下、反対討論です。

生活者ネットワークを代表して、議案第111号 練馬区地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例の一部を改正する条例に反対し、陳情第84号 石神井公園駅南地区地区計画変更案の撤回を求めることについての願意に賛成の立場で討論を行います。

区は、石神井公園駅周辺のまちづくりのあり方を検討するために2000年に「石神井公園駅周辺地区まちづくり協議会」を設置しました。16回の話し合いの後にまとめた協議会の提言を参考に「石神井公園駅周辺地区まちづくり全体構想」を策定したのが2003年でした。

「緑の風が薫り街の賑わいが交差する、安らぎのあるまち石神井」をまちづくりの目標にして作成されたのが「石神井公園駅南地区まちづくり計画」。そして、この計画を受けて現行の「石神井公園駅南地区地区計画」が2012年に都市計画決定したのです。

まちづくり協議会設立から12年の歳月をかけて地元商店街や住民の合意形成を図って決定した地区計画ですが、さまざまな意見があり、「当時、異論があったけれど、話し合いを重ねた結果だから飲み込んだ、納得した」という関係者の方の声も聞いています。

地区計画の決定から約2年後、石神井公園駅南口西地区再開発事業をすすめるための準備組合が設立され、その後高さ100メートルを超えるビル建設などの計画案が示されました。

この再開発事業については、地元権利者のみならず駅や公園利用者からも見直しを求める多くの意見があり、何度も議会で取り上げられてきました。

しかし、区は、異論を唱える声には一切耳を傾けることなく、区民の疑問や意見に対して納得できるような答えを示してきませんでした。準備組合が示した計画案を実現させるために、今回の地区計画の変更を決めたと多くの区民が受け止めています。

自治体の都市計画やまちづくりに関わってきた専門家は「本来であれば、事業者や利害関係のある権利者に対してレフェリー役であるはずなのに、プレーに参加し、味方チームが不利になるとルールを変えるのが、今の練馬区だ」と指摘しています。

最高高さ規定や壁面後退など現行の地区計画から大きく変更する素案作成からわずか1年の間に都市計画決定しようとする区の姿勢は、いったい誰のためのまちづくり計画なのだろうかと疑念を抱かざるを得ません。

元我孫子市長の福嶋浩彦さんは、AとB、と違う意見があるとき、数の多さや声の大きさなどでどちらかひとつを選ぶのではなく、議論を重ねCという解を導き出すことが民主主義だと言い、市政に反映してきました。

東京都都市整備局のサイトでは、地区計画とは「地区の課題や特徴を踏まえ、住民と区市町村とが連携しながら、地区の目指すべき将来像を設定し、その実現に向けて都市計画に位置づけて『まちづくり』を進めていく手法です」とあります。しかし、区のサイトでは「比較的小規模な地区を対象に、それぞれの区域の特性にふさわしい良好な環境の各街区を整備し、保全するために、建築物の形態、公共施設の配置などを定めています」とあり、そもそも、住民と連携するつもりはさらさらないのか、と愕然としました。

区内には、都市計画道路や鉄道の立体交差化に伴ってこれから地区計画を決定する地域が複数あります。区と住民、住民同士が信頼関係を築き、十分な合意形成を図るための役割をもっとも住民に近い練馬区が果たさなければ、同じようなことが続くのではないかと本当に心配です。

石神井公園駅南地区地区計画の都市計画変更案は権利者および住民との合意形成は不十分であり、地区計画変更案の見直しと、公園通り沿道地権者の合意形成が不十分な計画案の撤回を求める陳情の採択を求めて生活者ネットワークの討論を終わります。

写真は、以前のものです