特別定額給付金、自治体は個人単位の給付のための工夫を

新型コロナウイルス感染症拡大防止のために緊急事態宣言が出されて2週間以上が経過しました。
多くの国民の暮らしに影響を与え、仕事や住まいをなくなど危機に直面している人々も少なくありません。緊急経済対策として当初、条件が複雑な「30万円の給付」が浮上しましたが、「自粛と給付はセットで!」という世論が政府を動かし、ひとり一律10万円の「特別定額給付金(仮称)」が給付されることになりました。

その申請と給付の方法は、受給権者を「世帯主」として、家族分を一括して申請、世帯主の口座に給付することを基本としています。
しかし、この方法では、本当に一人ひとりが活用できない場合が出てくることを懸念しています。

たとえば、東日本大震災などの災害時の支援金や東電福島原発事故の補償金などを、世帯主が取り上げてしまって家族に渡さなかったというようなトラブルが複数報告されています。

今回の給付金事業では、発表と同時にDV(配偶者からの暴力)被害者への事務処理の対応を示したこと、被害当事者に向けて申請方法を示したことは、支援団体がこれまで継続してはたらきかけてきた成果だと思います。
私たちが心配しているのは、感染症拡大防止のための在宅ワークや休職などで家族の関係性が悪化してしまうケースです。

申請手続きなどの事務は、各自治体で担うことになるので、世帯単位ではなく個人が受け取れる工夫をするよう練馬区に要望しました。
新型コロナウイルス感染の終息には時間がかかることが予想され、給付金や支援金は今回だけとは限りません。ジェンダー平等の視点で問題のある世帯主主義を見直し、個別申請・給付を求めていきます。

練馬区長 前川燿男様

特別定額給付金事業に関する要望

2020年4月24日

生活者ネットワーク

職員の皆様におかれましては、新型コロナウイルス感染予防対策のため、少ない職員体制で、今までにない緊急事態の中、職務にあたっていただき感謝申し上げます。
さて、4月20日付総務大臣の通知の通り、特別定額給付金(仮称)事業が実施されるに当り、実施主体が市区町村となることから、以下緊急に要望します。

1.DV等被害者への給付について
内閣府および総務省から「配偶者からの暴力を理由とした避難事例における特別定額給付金関係事務処理について」(4月22日付)にあるように、確実にまた安全に給付されるように求めます。また、給付開始までの時間が少ないため、該当者に対して速やかに周知してください。さらに、給付の実務にあたっては、DV対応の担当者も配置し、連携して対応できるよう求めます。

2.外国人や障がい者ほか配慮が必要な区民への対応について
外国人や障がいのある対象者へは、わかりやすい日本語や多言語による情報提供をお願いします。また、ホームレスやネットカフェ生活者など住民票を持たない人も登録により支給を受けられるとなっています。登録申請には速やかな対応を求めます。児童養護施設など施設生活者について課題が生じることも予想され、さまざまな相談に応じられるようホットライン開設やホームページ活用を求めます。

3.給付金の申請について
給付金の受給権者は世帯主となりましたが、申請にあたり必要となる申請書の郵送を世帯主宛ではなく、個人宛に郵送できるようにすることの検討を求めます。配慮が必要な事例は、DV等被害者だけではありません。世帯のあり方は多様化し、DV等被害者に加え、虐待を受けている子ども、施設入所者など、配慮が必要であり、同居していても関係性が悪く、世帯主が全てを取り上げてしまう可能性など、本当に必要な人にまで届けられないのではないかと危惧するものです。確実に必要な個人に届けるために、申請書の郵送先を個人宛にしてください。

4.給付金の振込先について
3が実施できない場合(同一世帯への郵送のため、一括して送付しなければならない場合等)であっても、給付金の振込先を給付対象者ごとに指定できるように策を講じることを求めます。たとえば、同封する申請書類を給付対象者ごとにし、給付対象者ごとに異なる振込先を指定することができるようにする等、世帯主が、世帯受給権者として使い道まで決めてしまうことがないようにすべきです。(ただし、同一口座に振り込みを希望するものについては、それを可能とする)

以上、迅速かつ確実に必要な方に給付されるよう、よろしくお願いいたします。