認知症施策は誰のため?

今年6月に閣議決定された「認知症施策推進大綱」。
当初発表された「70代の有病率を6年で6%、10年で1割程度減らす」などの数値目標は、認知症当事者と家族の会などからの批判で撤回されました。はたして、この「大綱」が私たちのめざす「だれもが共に生きる社会」につながるのだろうか?
10月15日(火)、それを検証するために学習会を開催しました。

司会を担当したやない

講師は、関町にある認知症に対応したグループホーム「きみさんち」の管理者で、介護福祉士・介護支援専門員の志寒(しかん)浩二さんと、医療や介護など福祉分野のノンフィクションライターで、多職種連携のケアコミュニティカフェを主宰する中澤まゆみさん。

学習会開催に向けて、8月に「きみさんち」の運営推進会議(利用者家族、児童民生委員、ボランティア、ケアマネ、町会、区職員などが参加し、運営状況などの報告を受ける)に参加し、経営理念や運営状況、利用者の生活の様子を伺いました。
会議の中で、「認知症をきっかけに適切なケアや地域とのつながりができれば、当事者や家族の新たな人生が始まる可能性、希望がある」という志寒さんの発言を、学習会のタイトル「認知症はあらたな人生のはじまり⁉」にしました。

運営推進会議後も志寒さんや「きみさんち」についての質問は尽きません

学習会の冒頭、認知症の発症メカニズムは解明されておらず、現在行われている予防対策の科学的根拠は明確ではないのに「予防」を重視すること、予防のための研究開発が掲げられ、産業促進に介護保険の財源を投入することなど、福祉部会が事前学習で議論した疑問などを報告しました。

事前学習の報告をする福祉部会メンバー

老化による認知機能の低下は誰にでも起こり得ることです。困るのはそれによって生活に障害が生じること。その人の当たり前の生活をどう支えるのか、身近な自治体の取り組みが問われます。

志寒さんは「認知症に対する偏見や差別がある限り『予防』は恐れや不安を増長し、本人や家族を苦しめるだけ」と指摘し、「認知症をもつ人も、もたない人も、全ての人が認知症とともに歩み、支え合う『おたがいさまの社会』を目指しましょう」と。また、「当事者や家族の声から、共に生きるための条例を区民が提案することも、共生する社会の実現につながる」という中澤さんの提案を共有しました。

介護や医療サービスで生活環境が改善され、落ち着いて過ごせる人たちは大勢います。
安心して暮らせる環境こそ、優れた認知症対策ではないでしょうか。今後検討される「第8期介護保険事業計画の策定」に向けて、認知症とともに暮すための取り組みを求めていきます。