新しい公害「香害」の啓発を~決算特別委員会質疑より

香りが強く、より長持ちする柔軟剤などのテレビコマーシャルを見ない日はありません。その一方で、これらの製品に使われている化学物質やニオイによって、頭痛や吐き気、咳が止まらないなどの健康被害を訴える事例が増えています。
「子どもが週末に持ち帰った給食当番の白衣のニオイが強くて閉口した」という程度で済むものではなく、場合によっては、学校や仕事にも行けなくなるという事例も聞いています。

昨年の7月、8月に、日本消費者連盟は香の害に苦しむ人からの相談窓口「香害110番」を2日間開設し、213件の相談を受けました。
「近隣の洗濯物から香る柔軟剤のニオイで気分が悪くなり、窓が開けられない」「職場の同僚の衣類の強い香りに体調不良を起こした」といった、当事者にとっては深刻な問題です。
練馬区の消費生活支援センターでは年間約5000件の相談を受けています。香の害についての相談が届いているか確認したところ、
2015年度 3件、2016年度 8件、2017年度 4件だったとのことです。

練馬区で開業して、全国から化学物質過敏症の相談や診察・治療にあたっている医師を講師に迎え、「体に良くない化学物質」という学習会を開催しました。その中で、化学物質過敏症の因子として、ウレタン材料のイソシアネートの危険性について警鐘を鳴らしていました。

イソシアネートは加工しやすく、ウレタン材料以外にも芳香剤や柔軟剤、農薬、塗料、建材など極めて広範囲に使われていて、使う側にとっては加工しやすく、非常に使い勝手の良い化学物質だそうです。
ところがその一方で、毒性がとても高いにもかかわらず、厚生労働省が指定するシックハウス原因物質の規制の対象外になっています。柔軟剤などの香りを持続させる、香りを取れにくくするために使われているマイクロカプセルの材料としてイソシアネートが使われているのです。

「香害」の問題は、香りそのものの被害に加えて毒性の高い化学合成物質が使われていること、特に心配なのが感受性の高い子どもたちにより多くの影響を与えるということです。

今年の7月、日本石鹸洗剤工業会は、衣料用柔軟仕上げ剤の品質表示基準を改定して「周囲への配慮」「適正な使用量」など香りに関する注意喚起を追加しました。

自治体の取り組みとしては、埼玉県、大阪府堺市、八王子市の消費生活センターなどが香りのマナーを呼びかけるポスターを作成し、公共施設の入り口に掲示するなど、啓発に取り組んでいます。

練馬区では、実は、3年前の2015年5月発行の消費者だより「ぷりずむ」でいち早く「香りの害」について取り上げているのです。「ぷりずむ」は区のホームページ上の掲載期間を2年間としているため、現在、当該のものを見ることができないのは残念です。

「ぷりずむ」の発行に関わっている練馬区消費生活センター運営連絡会の方に伺ったところ、今は「香り」から「消臭」に変わりつつあって、そのための化学物質も心配だということでした。

「香害」は新しい公害と言われています。環境や保健衛生の部門とも連携して区民への啓発に取り組むよう働きかけていきます。

社会的には「香りの害」という認識はまだ低かった当時、区がいち早く消費者行政として取り組んだことに正直感心し、決算特別委員会で取り上げました。