電力小売り自由化は「脱原発」の選択を

 東日本大震災、そしてそれに伴う福島第一原子力発電所事故から、6年目の春を迎えようとしています。いまだに多くの方が避難生活を余儀なくされています。IMG_2336

私用で福島を訪れました。知人宅は、除染後の放射性廃棄物の仮置き場を自治体に提供したと言います。高速道路からは、黒いフレコンパックが積み上げられ始めた空き地を何か所も見ました。おそらくこれから敷地いっぱいにフレコンパックが積み上げられていくのでしょう。

サービスエリアで南相馬市の手に取った広報誌には、原発事故に起因する情報に多くの紙面を割いていました。「原子力発電所事故被害救済センター」、「被災者支援何でも相談」、「原子力損害賠償和解の仲介」や「水道水の放射線除去」など、「放射線とともにある暮らし」これが、東京から車で数時間走った福島の現実だとあらためて感じました。

自主避難者の家賃補助が2017年3月末で打ち切られるため、福島県は、全国約20カ所に「生活再建支援拠点」を整備し、原発事故に伴う自主避難者の支援を強化するとしています。避難者は放射線への不安だけでなく、子どもの進学や家族の介護、仕事の問題など個々の事情を抱えるなかで生活再建を組み立てなければいけません。また、県内外を問わず、いまだに避難先に溶け込めず孤立を感じている人もいると聞きます。二度とこんな状況にならないためには、脱原発をすすめ再生可能エネルギー(以下、再エネ)へと転換するエネルギー政策を進めるしかないはずです。ところが、国は、汚染水対策や廃炉への道筋などのめどが立たないにもかかわらず、鹿児島県川内原発、福井県高浜原発と次々と再稼働して原発推進を加速させているのです。

東日本大震災から5年になるのを前に、NHKが原発に関する世論調査を行ったところ、日本の住民の70パーセント以上が、「原発を減らすべきだ」あるいは「すべて廃止するべきだ」と考えていることが分かりました。福島第一原発の事故のあと、多くの人が原発による電気は使いたくないと考えましたが、当時は電源を選ぶことはできませんでした。いよいよ、4月から電力の小売り全面自由化が始まり、すべての家庭や事業所で電力会社や料金メニューを自由に選択できるようになります。ガスや石油など電気以外のエネルギーを扱う会社や通信会社、生活協同組合などさまざまな事業者が参入しています。

1月から電気事業者の変更申込みの受付が可能になり、消費者への勧誘が始まっています。消費者が原発に依存せず、環境に配慮した電源を選択するためには、電源構成や環境負荷の表示が必要ですが、今のところ「努力義務」に過ぎません。一社独占だったエネルギーから、個人が事業者を選択できる権利を得たはずなのに、さまざま流れている情報は、「消費電力が多ければお得」のように省エネに反するものや、安さばかりを強調する商業ベースのものがほとんどです。しかし、再エネを提供しようと準備している事業者はあります。また、地域主体で再エネによる電力会社をつくった自治体もあります。

電力の自由化は個人の選択が社会の構造を変えることにつながり、エネルギーシフト推進のチャンスだと考えています。契約を変えることで意思表示をすることができ、それが広がれば再エネ電力を増やすこともできると思います。電力会社の契約を変えようと考える時、ぜひ、再生可能エネルギーの提供をする事業者も選択肢に検討してください。その判断に必要な、電源構成や環境負荷の表示義務を国や事業者に求めていきたいと思います。