「持続可能」を口実にした介護保険の改悪にNO!
2000年に始まった介護保険制度は、3年ごとの見直しのたびに当初の目的であった「介護の社会化」からは遠ざかり、必要な時に必要な人が使えるサービスではなくなってきています。制度の持続可能性を口実に、政府は介護保険制度の改悪をすすめていると言っても過言ではありません。
厚生労働省は今月16日、2021年度からの介護保険制度改正案を社会保障審議会に示しました。
私たちが懸念していた「ケアプランの有料化(自己負担)」や「要介護1,2の生活援助サービスの自治体への移行」などは先送りされました。しかし、介護保険を利用する際、上限を超えた分が返金される「高額介護サービス費」制度の上限が、収入に応じて自己負担額を引き上げたり、低所得者を対象に特別養護老人ホームの食費や入居費を補助する「補足給付」制度を見直し、自己負担が増える方向が示されました。
要介護1,2は「軽度者」なのか⁉
社会保障審議会では2021年の改定に向けて、ケアプラン有料化や要介護1,2の訪問介護の掃除や洗濯などの生活援助、通所介護を介護保険から外し、低報酬の自治体の地域支援事業へ移行するなどが検討されていました。しかし、先送りする方向で調整に入ったと報道されました。
社会保障審議会の検討資料では「軽度者への生活援助サービス等に関する給付の在り方」という表現ですが、要介護1,2は決して「軽度者」ではありません。要介護1,2は在宅で暮らしている認知症の方の割合が高く、生活援助サービスの利用率も最も高い層であり、在宅の介護認定者の4割を占めています。専門職による質の高い継続した支援が、利用者本人、そして家族の生活を支えているのです。
「介護離職ゼロ」と言いながら、要介護1,2を給付対象から外しサービスを抑制しようとする動きは矛盾しています。
制度改定に向けて、保険者としての役割を果たせ
2015年の改定は、要支援1,2の人への給付が地域支援事業に移行し、市町村の事業となりましたが、十分な検証がおこなわれていません。
介護を社会全体で支えるために、多くのNPOが介護保険事業に参入し、訪問介護を中心に在宅での生活を支えてきました。しかし、利用抑制やサービス単価の切り下げや深刻な人材不足により、地域に根差して活動してきた小規模事業者の存続が危ぶまれています。
次期改定に向けた懸念材料は一旦先送りになったというものの、国は、財源不足を理由に給付を抑制し、「地域総合事業」という形で地域への丸投げを拡大する姿勢です。
また、介護保険制度は、複雑で理解するのが難しく、改定のたびに現場は混乱しています。
自分たちが払ってきた保険料でどのようなケアを受け、どのように生活できるのか、自分が高齢になった時にどのように暮らしたいのか、それに応える事業を組み立てるのが保険者としての区の役割と考えます。そのためには、介護保険利用者だけではなく幅広い区民の声を聞き、意見交換することが必要です。
区は介護保険者として、現場を置きざりに介護保険制度の改変を強引に進めないよう、国に訴えるべきです。