川崎市の子ども施策の一端を視察

生活者ネットワークは「子育て介護は社会の仕事」を掲げ、子どもの権利を保障し、子どもの育ちを社会が担うことが大切だと考えています。子どもの自主性を尊重し生きる力を育むための支援が必要です。その大きな役割を担うのが子どもの居場所です。1月17日、生活者ネットワークの区議のきみがき圭子橋本けいこ、前区議の菊地靖枝とともに「川崎市子どもの権利に関する条例」にもとづいて設置された「川崎市子ども夢パーク」と、川崎市が学童保育を廃止した後の民間学童の運営を視察しました。

川崎市子ども夢パーク

「川崎市子どもの権利に関する条例」にもとづいて設置された「川崎市子ども夢パーク」は、「生きているだけで祝福される場を」という思いで運営されています。

夢パークの3つの柱

  • こどもの活動拠点

子どもが自由に安心して集い、自主的・自発的に活動する拠点。子どもが夢パークの運営等に意見を表明し、参画するための「夢パーク子ども運営委員会」が開かれている。さらに、市政について市長が子どもの意見を求めるための「川崎市子ども会議」の事務室がある。

27条の「子どもの居場所」についての条文が書かれたボード

  • プレーパーク

「ケガと弁当自分持ち」で大人が用意した環境ではなく、子どもたちの「やってみたい!」という気持ちを大切にしている。土や水、火や木材などの自然の素材や道具や工具を使い、子どもたちの遊び心によって自由に使える遊び場。禁止事項をできる限りつくらず、子どもたちが自分で決めたり、危険を判断したりできるようにしている。「川崎市子どもの権利に関する条例」の27条「子どもの居場所」の条文がパーク内に掲げられている。

  • フリースペースえん

学校の中に居場所を見いだせない子どもや若者たちが、学校の外で多様に育ち・学ぶ場。毎日お昼ご飯を作って食べるなど「暮らし」をベースにしている。一人ひとり自分のペースに合わせて自分のプログラムを考えて活動する。学校長の判断によるが、川崎市内・外を問わず希望した子どもたちは「えん」に通った日が学校の出席として認定され、通学定期も発行される。

もっとも素晴らしいと思ったことのひとつは、不登校の子どもたちと放課後遊びに来た子どもたちとが学校とは違う場で共に過ごすことが可能であるということです。「学校」という場所には行けなくても友達と関わることができる環境があることは、不登校の子にとってもそうでない子にとっても違う面を見ることができ、お互いを認め合う機会になります。子どもたちの視点を広げ自己肯定感を高めることにつながるのではないかと思いました。

課題としては、まだまだ「子ども夢パーク」の認知度が不十分であること、「川崎市子どもの権利に関する条例」の認知度が下がっていることだそうです。また、子どもたちと直接接するスタッフの収入を十分確保できないこと。現在、週4日勤務で17万円支給しているそうですが、継続的な人材確保が難しいとのことです。

全天候型のグランド

 

 

 

 

 

 

 

学童ほいく「オカリナ」

以前は焼肉屋だったところを片付け、掃除して開設したそうです

川崎市は学童保育を2003年度で廃止し、全校に「わくわくプラザ」を設置し1~6年生の全児童を対象とした放課後(土曜・長期休業日)の居場所事業に転換しました。学童ほいく「オカリナ」は「川崎市子どもの権利に関する条例」がある川崎市が学童保育を廃止した後、子どもを預ける保護者(アンサンブル会)と協力者・指導員で運営している民間の学童保育所です。

「オカリナ」の保育料は、1年~4年生は月28,000円 、5・6年生は20,000円です。「わくわくプラザ」は無料(おやつ代、行事参加費は別途)なので、金額だけを比較すると高額に感じますし、保護者のかなりの負担をになっているのではないかと思います。川崎市は民間学童保育を国庫補助の対象にしていないため、保護者への補助がありません。さらに、川崎市に条例ができ、児童一人当たり1.65㎡を確保する必要が出てきたため、現状の場所(約60㎡)から移転する必要が出てきました。しかし、条例に則って運営しても、助成の対象になるわけではないそうです。定員50名の子どもたちが安心して放課後を過ごす場所を近隣に探すことは容易ではないとのことです。

指導員の岩渕さんは、子どもの豊かな居場所作りのために日々実践している、工夫と努力を伺いました。室内には登録している子どもたちが在籍する学校だよりが貼られていて、各校のスケジュールも把握し受け入れの準備をしています。訪問した当日、学校から帰ってきた子どもたちは、まず、宿題を済ませていました。その後、思い思いの過ごし方をしていましたが、現在の人気の遊びは将棋だそうです。けん玉を自由自在に扱う子どもの姿も見られました。複数の学校から通ってきているので、異年齢の交流ができることに加えて、他校の子どもたちともいっしょに過ごすことで子どもたちの視野も広がるのではないかと感じました。

練馬区では、練馬型放課後児童対策事業として、区立学童クラブからねりっこクラブへの転換を図っています。ねりっこクラブは、小学校の施設を活用して、「学校応援団ひろば事業」と「学童クラブ」のそれぞれの機能や特色を維持しながら、事業運営を一体的に行うものです。ねりっこ学童クラブについては、区立学童クラブと同様に、「練馬区学童クラブ指導方針」に基づいて運営を行っています。子どもたちの放課後の「生活の場」として、子ども最善の利益を優先した学童クラブ、ねりっこ学童クラブの運営を求めていきます。