「オーガニック給食」をどう考えるか?
学校給食の無償化の要望とともに、「オーガニック給食を食べさせたい」という保護者の声が特にこの1~2年で届くようになったと感じています。
「オーガニック給食の導入は実現可能なのか、生産者の考えを聞いてみよう」と、安全な食や環境に関心を持つ保護者の方たちと大泉町の白石農園を訪問し、白石好孝さんにお話を伺いました。
白石さんは、農業体験農園「大泉風のがっこう」を運営。今では全国で130カ所以上ある体験農園のパイオニアです。
オーガニックとは
「オーガニック」を検索すると、有機栽培。有機農業によって生産された農産物、食品、製品を指す言葉 とあります。また、有機栽培、有機農業は国が定める「有機農業推進法」という法律があり、この法律の中で「化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業をいう」と定義されています。
国内外の有機農業の状況は
全国の総農家数は約250万戸。そのうち有機農家の割合は0.5~0.6%だそうです。
欧米は有機農業が進んでいるとのことですが、北海道よりも北に位置するところが多く、害虫が出にくいので有機農業に取り組みやすい、という環境にあるとのことです。
化学肥料の切り替えは取り組みやすいが、害虫対策が難しい。
有機農業の現状は、「生産者と消費者の特殊な関係」と言えるのではないか。
環境負荷も考えながら、(仕事として)持続可能な農業、将来も見据えた取り組みが必要ではないか、と白石さん。
オーガニック給食の導入は実現可能なのか
まず、学校給食の実態、地場産農産物の導入について
学校給食に関する法律「食育基本法」では、地場産農産物の使用30%を目標にしているそうですが、現実的には難しいとのこと。
たとえば、学校数と農地の割合を考えると・・・
日野市や府中市、武蔵野市などが先進的に取り組んでいるということですが、練馬区の人口は約74万人。学校数も小・中学校併せて98校と、「パイの大きさが全然違う」と白石さん。
23区の農地の40%が練馬区にある、といっても常に30%の目標値を達成するのは現実的ではないと。
学校給食に地場産農産物を導入する際のハードル
1.学校栄養士の理解と努力
2.調理員の手間(不揃い、泥付き・・・)
3.農家の手間(流通 毎朝8時までに届ける)
プラス 校長先生の理解 だそうです。
給食の献立は、1か月単位。1か月先の生産状況も見込んで献立をつくり、発注することの大変さは容易に想像できるのではないでしょうか。
「3Lの玉ねぎを○○㎏」と発注することで、不揃いの野菜の下ごしらえとは比べ物にならないほど手間が省けます。
また、農家さんにとっても、JAや市場へは収穫物をまとめて出荷できますが、給食分を取り分けて時間までに届けることの負担は決して少なくないと。
それでも、学校給食に地場産農産物の導入をすすめることは、議会でも度々取り上げられ、流通面では改善されてきました。
さて、オーガニック給食についてです。
そもそも、生産量自体が少ない。地場産農産物の導入にもたくさんの関係者が苦労している現状で、「オーガニック給食」はかなり難しいことがわかります。
現在、学校給食では地場産のキャベツと大根のメニューの日があるように、ピンポイントで「オーガニック給食の日」という取り組みであれば、可能ではないか。有機農業・農産物を考えるなど子どもたちの成長に役立つような物語が必要。「量より質」を重視すること、など白石さんの考えを伺いました。
白石農園では、近隣の中学校の生徒が大根の種まきから収穫、漬物づくりまで体験する機会をつくっているとのことです。
一緒に話を聞いた保護者の方々も「生産者の率直な考えを聞くことができて良かった」と感想を述べておられました。
まずは、主食のお米から無農薬米にしていくことは考えられないだろうか。
消費量を確約して生産を依頼する、提携産地を模索することを提案したいと思います。
有機農産物にすれば、当然、価格にも跳ね返ってきます。
また、生産者がいて、私たちの食生活は成り立っている。将来にわたって安定して「安心な食」を確保するためには、生産者が安心して農業(・漁業・畜産業)に取り組める状況、持続可能性が求められています。そして、環境にやさしく栄養価も期待される「有機農産物」の生産コストがかかります。学校給食に導入する際、誰が費用負担するのか。給食費無償として税金で賄うべきと、私は考えますが、そのためには「全国どこに住んでいても無償でオーガニック給食が食べられる」ように、法律や環境の整備が必要。
農業施策、教育施策としての取り組みが必要であり、そこには、やはり政治が大きく関わっていることをあらためて実感した1日でした。