学ぼう!話そう!憲法と国民投票のはなし

2018年5月1日 11時04分 | カテゴリー: 平和・人権, 活動報告

昨年5月3日の憲法記念日に、安倍首相は「東京オリンピック・パラリンピックが行われる2020年を目標に、憲法9条に自衛隊の根拠規定を設けるなどの改正を行いたい」との考えを示しました。さらに、今年3月25日の自民党定期大会では、あらためて「憲法9条に自衛隊を明記する」と演説しました。

すぐにでも憲法改正の発議がおこなわれるような印象を与える報道もありますが、「憲法改正」の是非は、最終的には国民投票によって決められます。しかし、その国民投票に至るまでの流れやルールはわからないこと・知らないことだらけではないでしょうか?

 

4月21日(土)に「憲法カフェ 学ぼう!話そう!憲法と国民投票のはなし」を開催しました。「Q&A解説 憲法改正国民投票法」「図解 超早わかり国民投票法入門」などの著者で、国民投票法の研究者である、南部義典さんを講師に迎え、改憲までのスケジュールや課題を学びました。

憲法改正には、なぜ国民投票が必要か?

憲法96条には、「憲法改正」に至るまでの条件とプロセスが示されています。
①国会発議 (衆参)各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会が発議し国民に提案する
②国民投票 承認は、国民投票の過半数の賛成を必要とする
③公布    承認されたら交付する

疑問①なぜ、選挙で選ばれた国会議員が国民の代表として決めないのか?
⇒ 日本国憲法が国民主権の原理に基づくから。
主権(国政の最終決定権)は、国会でも、内閣総理大臣でも、天皇でもなく、国民にある。国の最高規範である憲法は、72年前に国民が作ったものであり、憲法を改正するかどうか最終的に決める権利は、国民だけが持っている。
疑問②国会発議の要件(総議員の2/3以上)は厳しすぎるのではないか?
⇒ 衆参両院の過半数による発議は、その時々の与党に有利な憲法改正をもたらす危険性が高まる
「憲法によって国家権力を拘束する」という立憲主義の根本を蔑にすることになる。憲法解釈、法律の制定・改正・運用では対応できない案件が生じたとき、最終手段として選択されべきものが「憲法改正」。

 

国民投票法制の課題とは?

課題1.18歳国民投票権の実現と少年法との課題整理
18,19歳の有権者は、法的に「一人前」の扱いを受けるにもかかわらず、その犯罪行為に関して「少年法」適用することは一貫性がない。国民投票を改正し、18,19歳の有権者による国民投票犯罪に関して、少年法の適用を除外する旨の特例規定を設けるなどの解決策が考えられる。
課題2. 選挙と同レベルの投票環境の向上等の実現
選挙権、国民投票権はいずれも同じ「政治参加の権利」。投票環境も同レベルに保障されるべき。
2015~16年にかけて、期日前投票所の増設や閉会時間の弾力化、期日前投票の事由追加(天災、悪天候など)など、公職選挙法の改正が矢継ぎ早におこなわれた。
しかし、国民投票法は追いついていない。第1回国民投票までに必ず整備しなければならない。
課題3.国民投票運動費用規制のあり方
国民投票法は、国民投票運動を原則自由とする理念に則り、その費用に関して何ら規制を設けていない。
金銭に関して自由に消費されればされるほど、有権者の意思が不当に歪められるなどして、国民投票の公正さを害する恐れが大きい(典型例が投票買収
国民投票運動費用の上限を設けること、条件(多額の支出など)を整備したうえで収支報告の義務付けや、虚偽内容の報告に罰則を設けるなどの整備が必要。
課題4. 憲法改正の成立要件の見直し
低投票率で憲法改正が実現した場合、投票結果の正当性に疑問。ちなみに、4月15日執行の練馬区長・区議補選の投票率は31.38%、投票者数は約186,000人だった。このケースで考えると(無効票を考えないで)、過半数の93,000人の投票結果が、約593,000人の有権者の総意とされてしまうことになりかねない。
課題5. 憲法改正に関する広報のあり方
テレビ・ラジオの憲法改正案広報放送、新聞の憲法改正案広報広告について、実施概要が何も決まっていない。放送時間を何分にするのか・回数は週1回か月1回か。広告の対象は全国紙のみか地方紙にも広げるか、量はどうするか。
政権放送の場合は選挙期間中、同一の内容が放送され続ける。憲法改正国民投票の場合は国会発議した日から投票日まで最長180日ある。同一の内容が続くと、視聴者が飽きてしまったり、発議後に生じた新たな争点に対応できなくなるなどの不都合がある。
課題6. 国民投票広報協議会の議事公開等
国民投票広報協議会がおこなう事務は、国民投票運動と並行しておこなわれる。その協議内容、決定事項は賛成派、反対派それぞれの投票勧誘運動に影響することはもちろん、その公正さを維持するためにも、速やかな情報公開が必要である。
国会の委員会運営は慣例上、与党第一会派、野党第一会派から選出された筆頭理事が日程、議事運営の主導権を握っている。広報協議会の運営を従来通りの方法に頼ると、「反対」の会派の意向が反映されなくなる恐れがある。「全会派一致」など少数会派尊重ルールを約束しておくことが望ましい。
課題7. 国民投票番組と政治的公平(放送法4条削除問題)
国民投票法104条では、国民投票に関する放送について「放送法第4条1項の規定の趣旨に留意するものとする」となっている。昨今、政府内では放送法4条を削除すべきとの議論がある。仮に削除されると、憲法改正案に対して賛成・反対いずれかの観点のみに立った番組、論点を矮小化した番組などが蔓延する恐れが生じる。

壁に穴が開いたくらいで家の土台から建て替えることはないですよね。
憲法改正は、憲法解釈、法律の制定・改正・運用では対応できないような、国民の生命やくらしに大きな影響を与えることになったときに選択する「最終手段」。選挙はやり直しがきくが、憲法改正は次がいつになるかわからない。
「何がなんでも自分の代で憲法改正を実現したい」と安倍首相が公言するのは「究極の首相案件」、と南部さんは指摘します。
不備だらけ、課題だらけの憲法改正国民投票法の下での改憲論議は問題だと感じました。
憲法が立脚する国民主権原理に密接にかかわる「国投票法制」では、自由および公正が最重要であり、これらを担保するためのルール設定が必要不可欠です。国民投票法に関する公正な法整備等を求める意見書の提出など、自治体議会にはたらきかけていきたいと思います。