多文化共生施策の充実で外国人に開かれた地域づくりを ~一般質問より~

第3次みどりの風吹くまちビジョンでは、「地域コミュニティの活性化と区民協働の推進」の取り組みとして、「外国人に開かれた地域づくり」を掲げています。

区は、国籍や言語、文化などの違いも受け入れて、だれもが心豊かに暮らせるよう、外国人に開かれた地域づくりに向け、外国人施策のあり方の検討を進め、新たな方針を今年度に策定する計画でしたが、国の方針を見極めるために今年度の策定は見送るとのことです。

練馬区国際交流・多文化共生基本方針が策定された2012年当時から、区内の在住外国人は年々増加する傾向にあり、当時の外国人登録者数は 約13,000人、区民全体に占める割合は約2%でした。現在の登録者数は、約29500人。区民全体の約4%を占める状況です。
区長は所信表明で、介護福祉士養成施設「光が丘福祉専門学校」の外国人学生が卒業後に孤立することなく区内で働き続けるためにサポートすることを述べています。介護業界をはじめとる様々な分野で人手不足は明らかであり、すでに地域では多くの外国人が私たちの暮らしを支えています。

高市政権の外国人政策は「外国人との秩序ある共生社会」を謳っているものの、取り組みの軸として示されたのは規制や制度の厳格化で、肝心の共生への視点が欠けていると言わざるを得ません。昨今、外国人に対する否定的感情がSNSやメディア報道を通じて増幅されているからこそ、外国人との共生を謳い、外国人に開かれた地域づくりの区の明確な姿勢を示し、外国人との共生施策の充実に取り組むことを求め、区長の考えを質しました。

以下、区の答弁
区は、だれもが心豊かに暮らせるよう、外国人に開かれた地域づくりに向け、今年度新たな方針を策定することとしていた。
10月に発足した新内閣は、外国人政策に関する基本方針を「受け入れ拡大」から「秩序ある共生社会の実現」へと転換し、これまでの外国人施策を大幅に見直す方針を示している。こうした国の方針や政策の方向性を十分に見極める必要がある。区の新たな方針の策手は、来年度以降に延期する。
外国人住民が増加するなか、区は、外国人が地域で安心して生活できるよう、多言語での情報発信や日本語学習の支援、外国語相談窓口の開設など、生活における様々な相談や支援を行っている。また、外国人住民の相互理解を深めるため、文化交流カフェの開催や親子向けの読み聞かせ会の実施など、相互交流の場の拡充に努め、外国人の地域参加も促している。
こうした必要な取り組みを着実に進めるとともに、引き続き、国の童虎や社会情勢を注視しながら、練馬区の実情に応じた外国人施策のあり方について検討していく。

高市政権の外国人施策についての朝日新聞の記事(2025.10.30)に対して、成蹊大学文学部現代社会学科教授の伊藤昌亮(まさあき)さんが寄せたコメントが印象に残ったので紹介します。
インバウンド政策を進めたアベノミクスが始まる前の2012年と2024年を比べると、在日外国人旅行者数は4.4倍になっていますが、出国日本人数はおよそ3分の2になっています。そのため、前者と後者の比は、2012年におよそ1対2でしたが、2024年には3対1になっています(観光庁調べ)。つまり日本は、外国からたくさん人が来る国になっただけではなく、外国にあまり行かない国になってしまったわけです。その主たる理由は、アベノミクスによってもたらされた極端な円安でしょう。

昨今の排外主義的な空気は、実はこうした状況にも関係しているのではないでしょうか。つまり日本人が外に出なくなり、その結果、いろいろな文化に触れる機会や、自らが外国人として遇せられる機会が少なくなり、すっかり内向きになってしまったのでしょう。だとすれば必要なのは、極端な円安の解消も含め、「外国人政策」よりもむしろ「日本人政策」なのかもしれません。