ESAT-J(英語スピーキングテスト)は廃止に ~第三回定例会報告~

2024年度決算審議では、都立高校受験への導入から3回目の英語スピーキングテスト(ESATーJ)について取り上げました。

国際理解教育と英語教育

国際理解教育とは、互いの文化や考え方を知ることで双方の「違い」を理解し、相手を尊重することで相互理解の態度を養うこと。相手の立場を尊重しつつ、自分の考えや意思を表現できる基礎的な力を育成する観点から、外国語能力の基礎や表現力等のコミュニケーション能力の育成を図ること。
英語は、あくまでもコミュニケーションツールのひとつであると考えます。

受験に取り入れれば英語力が向上するか

東京都教育委員会は、小中学校で身につけた英語によるコミュニケーション能力を高校でさらに向上させるため、小・中・高校で一貫した英語教育を進めるとして、2022年度から都内公立中学校3年生を対象に「中学校英語スピーキングテスト(ESATーJ)を実施しています。

ESATーJは開始前から、複数の教育関係者から問題点が指摘されていました。
・不受験者にほかの受験生の得点から換算して得点を与える
・100点満点の1点差が4点差になってしまう
・採点機関が明らかでない、採点基準の不明確さ  など
にゅし制度設計自体に問題があり、生徒の将来を左右しかねない高校入試に導入すべきではないと指摘されてきました。

しかし、都教育委員会は予定通り2022年度から実施。
実施後には、「音漏れ」や「問題情報漏れ」などの問題も新たに出てきました。
このような状況の中、当初の受託業者であるベネッセが撤退し、ブリティッシュ・カウンシルが受託することになったのが2024年度でした(2024年度契約で210億円)。

2024年11月に実施された3回目のESATーJは、
・器具の不具合で再受験となった生徒が多数(255人、前年度の4倍)
・ほかの生徒の声が丸聞こえの後で受験した生徒もいた
・試験監督の手違いで開始時間がバラバラために、他の生徒の回答を聞いてから答えた生徒がいた
・テストそのものは説明を加えても30分かからないのに、待ち時間が3時間、移動時間を加えると5~6時間かかるケースもあった
など、これまで以上に問題が多く発生したとのことです。

2024年度に受験した区内の高校生から下記のような意見を伺いました。
志望校が私立高校のみの生徒も受験することが決められていた
英語の能力を調べるのであれば、英検の二次試験のような一対一でやるべき
感覚的にクラスの半数以上がAランクで、やる意味があるのかと感じた

受験科目に導入すれば生徒が熱心に取り組み、子どもたちの英語力が向上するという考え方は短絡的ではないでしょうか。
文部科学省は英語が話せる人材育成の一環として、小学校英語の教科化に取り組んだようですが、現実は小学校段階で「英語格差」「英語嫌い」が増え、深刻な状況だと専門家は指摘しています。
国際理解教育や英語力向上をめざすのであれば、過重なノルマや数値目標で子どもを追い立てることではなく、すべての子どもに外国語を学ぶ喜びを感じるような教育方法を検討すべきではないかと考えます。