「再審法の改正を求める陳情」に賛成し、討論しました
練馬区議会第四回定例会が閉会しました。
最終日は、定例会中に審査した議案や陳情について賛否を表明します。自分が所属する委員会で審議した議案や陳情については、委員会の中で賛否の理由を述べることができます。所属していない委員会で審議され、私たちの意見を表明できない場合は本会議の場で討論することができます。
今定例会では、議案39件と陳情8件を審議しました。
その中で、「再審法(刑事訴訟法 第四篇再審)の改正を求める意見書を国会及び政府に提出することについて」という陳情に賛成する討論をおこないました。
陳情の要旨は以下の2項目を含む、再審法の速やかな改正を求める意見書を、区議会から国会及び政府に提出することを求めるものです。
1 再審請求審にあたって、捜査機関(警察及び検察)が保管しているすべての証拠を開示すること
2 再審開始決定が出された場合、検察官による不服申し立てを許さず、速やかに再審公判を開くこと
事件から58年を経て再審無罪となった袴田(はかまた)巌さん。1980年に死刑が確定し、44年間もの間「死刑囚」とされてきました。2014年に静岡地裁の決定で再審と釈放が認められましたが、検察が不服を申し立て、再審を認める決定が取り消されたため、刑事手続き上は死刑囚という立場のままでした。
再審法改正の議論がすすむよう、地方議会から意見書を出すのは重要であり、練馬区議会からも出すべきです。
ところが、陳情を審査した企画総務委員会では、「国会で議員連盟ができたから」「議員連盟の動き、議論を見ながら検討するのがよい」と、区議会からの見書提出を否決する委員が多数で、陳情は「不採択」となってしまいました。
以下、討論原稿です
生活者ネットワークを代表して、陳情第64号「再審法(刑事訴訟法 第四編再審)の改正を求める意見書を国会及び政府に提出することについて」の願意に賛成し、陳情を不採択とした委員長報告に反対する討論を行います。
再審法改正を実現するためには国民世論の力が必要であり、地方議会での意見書の採択はその一つとして重要であると考えます。今回の陳情を不採択とすれば、一事不再議により、少なくとも練馬区議会の20期中は再審法改正を求める声を閉ざしてしまうことになりかねず、私たち会派としては不採択としたことに反対せざるを得ません。
付託された企画総務委員会でも審議されたように、再審法の改正を巡っては国政の場においても「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」が麻生太郎氏を最高顧問とし、顧問には公明党のほか立憲民主党、日本維新の会、日本共産党、国民民主党、教育無償化を実現する会、社民党、れいわ新選組の各党代表が就任し、3月に発足。6月には法務大臣に要望書を提出しました。その要望書で要望している再審法改正についての要望項目が、陳情第64号で挙げられている捜査機関すなわち警察、検察の保持している証拠の全面開示と、再審開始決定に対する検察の特別抗告の禁止です。
9月に完全無罪判決が確定した袴田(はかまた)事件では、検察が提出を拒んでいた証拠について裁判所の命令により、提出された味噌樽に漬けられていた着衣のカラー写真が新証拠として袴田巌さんの無実を裏付け、無罪判決を導き出しました。また、再審決定に対する検察の特別抗告のために無為に10年近くが費やされたことも報道されている通りです。
現在、第3次の再審請求が東京高等裁判所に出されている狭山事件では、弁護団の要求により裁判長が検察に提示を指示した証拠の中に、確定判決を覆す重要な証拠が存在しました。犯人とされた石川一雄さん宅から発見された万年筆と被害者が使用していた万年筆のインクが違うということが、弁護団の鑑定で石川一雄さんの無罪をさし示す新証拠として裁判所に提出されました。
捜査機関が集めた証拠類は税金で集められた国民の財産であり、捜査機関である警察、検察が私物化してよいものではありません。裁判が真実を明らかにしていく場であるなら、全ての証拠を開示し正々堂々と有罪、無罪を論じるべきです。
あってはならない証拠のでっち上げが袴田事件では再審判決で認定され、厳しく断罪されました。すべての証拠が開示されていれば、袴田巌さんはもっと早く無罪を得ることができ、死刑の恐怖や長期の拘禁による精神の不調をきたすことも無かったでしょう。
再審請求に不服があるならば再審の法廷における審議によって争えば済むことであり、門前払いにより審理そのものを開かせないとする請求は、法の名において真実を明らかにする裁判に不要のものです。
日本弁護士連合会ならびに議員連盟が法務大臣に提出した2点の要望は明確であり、要望内容について国会の動向を斟酌する余地はありません。
先の衆議院選挙の結果を受けて法務大臣が代わりました。法改正の動きを後退させないため、国会における議論を促進していくためにも、地方議会から声を上げていくことは重要であると考えます。既に全国の400を超える議会が、法改正や改正に向けた議論の必要性を訴える意見書案を可決しています。
真実を明らかにする最後の手段が再審であり、真実を明らかにしていくこと、冤罪を生み出さない社会正義のためにも一刻も早い再審法の改正が必要であり、陳情第64号は採択すべきです。
以上で生活者ネットワークの討論を終わります。