食とマイクロプラスチックの関わりについて ~学習会報告~
直径が5mm以下のプラスチックのことをマイクロプラスチック(以下、MP)と言います。
ポイ捨てされたペットボトルや風に舞うレジ袋が、劣化し粉砕され街なかから川へ、川から海へと移動し海洋汚染につながっていること、海洋生物や海鳥のおなかの中からプラスチック片が観察されることなどを課題と捉え、暮らしの中のプラスチック製品を減らすこと(特に、使い捨てプラスチックの削減)を目的に学習会を企画してきました。ところが、実態はさらに深刻で、ここ数年の研究では大気中にもMPが浮遊していることなどがわかってきています。
9月7日(土)に学習会を開催
食品や食材中に含まれるマイクロプラスチックや、経口摂取したマイクロプラスチックが生体に及ぼす影響を動物実験で検証し、マイクロプラスチックの対外排泄作用を有する食素材を発見された、東海大学海洋学部水産学科食品掲揚研究室准教授の清水宗茂さんを講師に迎えました。
参加者は、6年生の児童を含め52名。会場の定員いっぱいの参加があり、関心の高さを感じました。
食品や包装材にもマイクロプラスチックが
清水先生ご自身の研究や、海外の研究から、魚介類だけでなく市販されている食塩などの食品からもマイクロプラスチックが検知される実態があること。さらに、テイクアウトやカップ麺などの包材の表面にもマイクロプラスチックが付着している事例があるそうです。
自覚がないままに体内に取り込んでいる可能性があることをあらためて確認することになりました。
体内中のマイクロプラスチックを排出する研究
清水先生は、食品メーカーや製薬会社で研究開発に取り組み、特定保健用食品(トクホ)やサプリメントの商品開発に携わってきた経験を生かして、東海大学で研究者としての道を進むことにしたそうです。
微小MPは、腸のバリア機能を通過することが可能であり、 微小MPを摂取したマウスや ヒトではさまざまな臓器にMPが蓄積することを突き止め、炎症反応が亢進し、多くの疾病リスクへの影響も示唆されました。
MPの環境汚染は深刻であり、課題解決には
マイボトルやマイバッグ持参するなど、プラスチック製品の使用を減らす(リデュース)ことは大切。
一方で、MPをまったくゼロにする生活、MPを排除した空間で生きることは難しい。
そこで、清水先生は口からとったMPを体内に吸収させず、速やかに便として排泄させる研究に5年ほど前から取り組んでいるとのことです。
ラットによる研究により、「キトサン(エビの殻やカニの甲羅等に含まれる)、卵殻タンパク質」の効果が高いことを発表しています。
これらの成分は、余計なコレステロールや中性脂肪を排泄する特保で使われている素材で、安全性・有効性が確認されている食物繊維です。
清水先生は、大学の役割としてMPの問題を社会にどう還元できるか。人の生活に寄与できる研究を続けていきたいと述べられました。
世界規模のプラスチック環境汚染を止められるか?
プラスチックによる汚染を規制する新たな条約作りに向け、11月25日から韓国・釜山で政府間交渉委員会の最終会合が開催されるとのことです。環境に流出するプラごみを減らすため、世界各国が真剣に取り組むことを期待します。
講師の東海大学海洋学部水産学科食品栄養学研究室准教授 清水宗茂さん、山﨑まりも区議(右)