大地が息を吹き返すように ~「杜人」上映会~

「杜人(もりびと)環境再生医 矢野智徳の挑戦」という映画をご存じでしょうか?

2022年4月封切後、気になりつつも鑑賞の機会を逃してしまい、やっと見ることができたのが昨年(2023年)10月の区内の女性団体主催の自主上映会でした。
噂に違わずとても素晴らしい映画で、私の周りのひとりでも多くの人に観てほしい、私自身ももう一度観たい、という思いに駆られました。
同じ思いの人と実行委員会を立ち上げ、6月1日(土)の上映会と監督の前田せつ子さんとのトークセッションを企画。当日は約100名の皆さんといっしょに映画を見ることができました。

いま自然に何が起きているのか

「呼吸と血管、空気と血液の循環が体の中をめぐっているのと同じように、大気と水の動きが地球全体でからだのように循環している」この循環に支障が出ると、人間も成人病など体に影響をおよぼすように、自然環境にも影響する。

コンクリートで固められた大地は生態系循環不良を起こしている

私は、近年の大量降雨などによる地滑りや川の氾濫などの被害について、
気候危機による天候の変化
川や沼地など本来であれば住居に向かない土地(地形)を開発し住宅地にした
ことが原因だと考えていました。

間違ってはいないようですが、
世界中に広がる「コンクリート土木」
⇒ 大地の上にコンクリートが載せられ、重機という重たい鉄の塊の機械で地面を傷める
⇒ グライ土壌=空気や水が循環しない有機ガスがこもる土の層をつくる
⇒ バクテリアから小動物、植物の下草から高木、あらゆる生態環境の機能に問題をもたらす 

生態系循環不良、わたしたちにできること

映画では、校庭が大きな水溜りになった小学校が出てきます。

「水溜りや泥水は、大地の血管が詰まっている証拠」と矢野さん。
移植ゴテで表層の水切り(水路をつくっているように見えました)を行うことで、どんどん水が流れ始めました。
そして、水が流れ始めるとチョウチョなどの生き物も寄ってくる、そんなシーンも印象的でした。

屋久島の浜、福島県田村郡三春町の福聚寺の改修、2018年の西日本豪雨の土砂崩れの現場、2019年の台風19号で河川が決壊・氾濫した現場など、大地の再生も視野に入れて矢野さんが黙々と作業する姿に感銘を受けました。

監督はいま・・・

映画撮影からすでに5年以上経過した今、前田せつ子監督は地元の国立(くにたち)第二小学校の新校舎建設に伴い「伐採される100本ほどの樹木の命を救いたい」と、奔走する日々です。伐採を免れ、移植されることになった樹木の移植先のひとつは、練馬区内の武蔵大学であると伺いました。

アンケートより

参加した皆さんにアンケートをお願いしたところ、記述形式にもかかわらずたくさんの方が応じてくださいました。お一人おひとりの文章から映画や監督への熱量が伝わってくるようです。
あらためて作品のすばらしさを実感しています。

以下、アンケートからほんの一部をご紹介します。

映画「杜人」の感想

・大変感銘を受けました。内容を深く知らずに申し込みましたが、矢野さんの言葉が心に残り、活動について更に知りたいと思いました

・矢野さんの真剣なまなざしに涙が止まらなくなりました。本当に感動しました。今日から自分に出来ることは何だろうと考えました。いままで意識することさえできなかった大切な部分に触れ、申し訳なさと同時に気持ちを入れ替えるきっかけとなる映画でした

・心の底から矢野氏に共感します。具体的には難しいことですが、この国の大きな方針がこのようになれば地球環境はどれだけ良くなることでしょうと思いました。自分も小さな荒地や畑に少し関わっているので、言われることが身にしみてきました

・植物、自然の気持ちになって解決を図る姿に打たれました。その意思を継ぐ人を育ててTVで暴風で倒れた街路樹の小さな根を見て、これでは踏ん張れないよ苦しかったろうに、と思ったり、コンクリートで無理やり固められた山道脇の土手を不安をもって見ていたことを思いだしました

トークセッションの感想

・映画製作の背景やその後のお話を伺えて楽しく過ごさせていただきました

・エネルギッシュで良かった。前田さんの信念は正しいと思うので、これからも心赴くままに活動してほしい

・前田監督さんと矢野さんがどう知り合って、映画を撮ることになったかの経緯もお話くださって良かったですし、とても興味深く聞けました

・矢野智徳さんの貴重な映像を残してくださった事に感謝します

「杜人」ぜひ、多くの方に観ていただきたいです。

 

トークセッションでは、前田監督のマシンガントークに圧倒された参加者は少なくないかも・・・

実行委員の一人として、司会を務めました