区立施設の人工芝は見直しを~2024年度予算質疑より~
生活者ネットワークは、これまで、マイクロプラスチックの海洋汚染について度々取り上げてきました。
今回の予算質疑において、区立運動施設等に敷設されている人工芝について、マイクロプラスチックの流出や化学物質など環境汚染の視点で取り上げました。
都内の環境団体が水面や川底のプラゴミを採取して調査、分析をおこなったところ、ゴミになったとみられるプラスチック製品を質量比でみると、人工芝が23.4%、肥料用コーティングが15.0%、発泡スチロールが8.9%だったとのことです。人工芝がマイクロプラスチックの流出に関与していることが指摘されています。
現在、人工芝を使用している区立のスポーツ施設は、運動場が4か所、テニスコートが6か所です。
環境省の「水・土壌・地盤・海洋環境の保全」のサイトでは、2021年5月 公益財団法人日本スポーツ施設協会がとりまとめた「人工芝グラウンドにおけるマイクロプラスチック等流出 抑制に関するガイドライン」を施設関係者に向け、 現状での対策案として公開しています。
排水施設の末端でマイクロプラスチック捕捉設備の設置や、利用者への流出防止の協力を求める注意喚起など、ガイドラインに沿った運用が必要と考えます。
Q:人工芝を敷設している運動施設において、このガイドラインに沿った運用が必要と考えるが現状は?
A:人工芝の適切な管理が重要。人工芝は技術革新により耐久性が向上している。スポーツ施設には耐久性の高い芝を導入している。また、日常点検、適切な維持補修、定期的な更新を実施。更新の際には砂やチップなどの充填剤を再利用できる製品を導入するなど、環境にも配慮している
近年、有機フッ素化合物PFASによる水質汚染が問題になっていますが、アメリカの環境団体エコロジーセンターの調査では人工芝からもPFASが検出されたとのことです。人工芝のプラスチックは製造中に機会を詰まらせるため、原料にPFASを添加するそうです。今のところ、PFASフリーの人工芝を作るのは難しいと専門家は指摘しているとのことです。
欧米ではPFASの滲出(にじみ出る)を理由に人工芝を禁止する自治体が増えています。また、人工芝に弾力性を持たせるためのゴムチップにも発がん性や環境ホルモン作用のある物質が含まれていたと、消費者団体は指摘しています。(日本消費者連盟「消費者レポート」2023年6月発行より)
2月19日の区民生活委員会で、「練馬区立美術館・貫井図書館改築等基本設計の概要」が示されました。その中で、美術の森緑地に人工芝が敷設される計画になっています。
Q:マイクロプラスチック流出やPFAS、環境ホルモンなど、環境や人体への悪影響を及ぼすことが指摘、懸念されている中で、人工芝の使用を見直すべきだが、区の考えは?
A:美術の森緑地は、日頃から多くの子どもたちが遊びに来ているなかで、踏み固めなどにより芝の生育にむらがある部分もある。これまで、芝と保護マットの組み合わせによって対応するなど、生育状況を注視してきた。しかし、日当たりが悪いところや斜面では土が流れるといった現象も見られる。設計ワークショップの中でも土埃が課題という意見もあった。こういったことから南側部分は人工芝という計画である。
人工芝に関しては、環境へのさまざまな影響が懸念されているけれど、法規制されていません。しかし、区立施設での使用は環境保全の視点で検討すべきです。美術の森緑地は、これから再整備していくのですから、計画の段階で見直すべきと指摘しました。
予算質疑の後で・・・
予算質疑の数日後、品川区の区立施設での紙製人工芝が報道されました。
「へ~」と思って、調べていたところ、練馬区立中村南スポーツ交流センターでも紙製の品川区と同じ人工芝が使用されていることがわかりました。なんと、品川区よりも半年以上前に敷設されているではないですか!
ただ、いずれも室内です。屋外では耐久性に課題がありますね。