災害の時代におけるコミュニティ防災のあり方

練馬区では、防災事業の充実に貢献し、その功績の顕著な方および団体に対して感謝の意を表するとともに、区民の一層の防災意識の高揚と防災行動力の向上を図ることを目的として、毎年「練馬区防災功労者功労団体表彰式」を開催しています。
今年度は、3月3日(日)に、27名の功労者と41か所の功労団体が表彰されました。

災害の時代におけるコミュニティ防災のあり方

表彰式に引き続き、「災害の時代におけるコミュニティ防災のあり方」をテーマに防災講演会が開催されました。
講師の神戸大学名誉教授 室崎益輝(むろさきよしてる)氏は、阪神・淡路大震災で自らが被災者となり、震災の教訓を伝え、被災した経験を活かして建築防災の研究や復興支援に精力的に取り組んでいます。

会場のココネリホールにはたくさんの方が来場し、関心の高さを感じました。能登半島地震の発生によって「防災の情報を得たい」と考える方が増えているのだと思います。(撮影禁止のため、会場の雰囲気を伝えられず残念)

災害の時代
気候危機による「地球の変貌」による自然の凶暴化、巨大災害(集中豪雨、森林火災)
新型コロナウイルス感染拡大が災害時の避難行動や避難所運営に影響→感染災害
少子高齢化や過疎過密化などに加えて*他者依存化、経済力低下など→社会の脆弱化(*他者依存化 室崎氏は、かつては近隣住民と協力して取り掛かっていた水災害時の家屋から泥の搔き出しなどが、ボランティア頼みになっている事例を紹介)
自然の凶暴化と社会の脆弱化が災害の激甚化をもたらしている、と。

減災の時代
自然の凶暴化は制御できなくても、社会の脆弱化は回避可能
災害の巨大化に合わせて、災害に向き合える「防災力」も強くしないといけない→そのひとつが「市民防災組織」

共助や互助の必要性
阪神・淡路や東日本などの大災害で、公助と自助の限界が明らかに
社会の脆弱化の中で公助力や自助力が衰退してきている
公助:共助&互助:自助=5:∞(無限大):5

自主防災組織の活動
減災のサイクルに即して活動の具体化を図る
1.緊急対応
拡大防止(消火を含む)、救助救護、避難誘導
2.応急対応、生活支援
避難所運営、生活支援・炊き出し、要配慮者見守り
3.復興対応
家屋修理、復興まちづくり
4.予防対応、事前減災、公衆衛生
安全点検、地域備蓄、防災教育、防災訓練、予防対策

自主防災組織の課題
コミュニティの衰退、担い手の高齢化→新規転入者をどう巻き込むか、中高生の協力
活動のマンネリ化→炊き出しメニューの作成など、やりたいこと・面白そうなことをやってみる
権限の不明確さ→行政との関係性をつくり、自分たちで決めて責任を持つ

2007年の能登半島地震では、約2500棟が全半壊したにもかかわらず倒壊した住宅の下敷きになって亡くなった人は一人もなかったそうです。丁寧に壁土を塗って粘りをもたせた技能、漆塗りによって土台の腐食を防いだ知恵などが、生存のための空隙を巧妙につくりだして、倒壊家屋の中にいた人々の命を救ったのだそうです。
ところが、月日の経過に加え、特に今回の長い揺れには耐えきれず多くの犠牲者がでてしまったと室崎氏はお話しされました。
防災に関心が高まっている今こそ、命を守る災害対策を区民とともに考え、実践していかなければと考えます。