具体的なヤングケアラー支援を早急に ~一般質問より~

勉強や仕事をしながら家族をケアする子どもや若者「ヤングケアラー」について、生活者ネットワークは他会派に先駆け2016年に取り上げ、以降、度々質疑してきました。

2019年の一般質問では、大学と連携してヤングケラー調査を実施した他自治体の状況を踏まえ、区内の実態把握のための調査や学校関係者への啓発の実施、ケアラーの生活をサポートする専門の相談員が必要であることを質しました。この時点では、「区が実施した在宅介護実態調査で20歳未満の介護者はないとの結果が出ているため実態把握の必要はないものと認識している」と答えています。

翌年2020年の質疑では、2件のヤングケアラーの事例があったことを示し、「要保護児童対策地域協議会においても取り上げ、実態の把握に努める」と答弁し、ようやくヤングケアラー支援が前進したことを確認できました。

区長が所信表明でヤングケアラー支援に言及

第4回定例会で区長は「ヤングケアラーを支援するために、福祉、子育て、教育など各部門が連携した取り組みを行う」と述べたので、あらためて具体的な取り組みを質問しました。

私たちは、大人がすべき家族の看護・介護や家事などを担っている子ども自身が「自分はヤングケアラーなのかもしれない」と気づくことができる取り組みが必要だと考えます。例えば、校内に「ヤングケアラーとは」とわかりやすく啓発するポスターを掲示するなど早急に取り組むこと、さらに、子どもたち自身が気づき、相談できる窓口の設置などを求めました。

区の答弁
・校長会や教職員研修においてヤングケアラーの早期発見の重要性などを周知
・遅刻や忘れ物が目立つ、学校を休みがちなどの児童生徒の中に、ヤングケアラーが存在する可能性があることに着目し、面談やアンケートなどで早期発見に努める
・学校や介護、障害福祉などの関係機関、子ども家庭支援センターや福祉事務所、生活サポートセンターなど、どの相談窓口でも課題を受け止め連携して支援する
・改定アクションプランや次期教育振興基本計画に位置付け、福祉、子育て、教育などの各部門が連携して取り組む

ケアラー支援条例の制定を

日本ケアラー連盟によると「こころやからだに不調のある人の『介護』『看病』『療育』『世話』『気遣い』など、ケアの必要な家族や近親者、友人、知人などを無償でケアする人」をケアラーと定義しています。最近では、日本語が第一言語でない家族の通訳もケアラーにあたるとしています。

2020年度に埼玉県ケアラー支援条例が制定されて以降、北海道栗山町、三重県名張市、岡山県総社市が条例を制定し、茨城県でも制定に向けて動いているとのことです。

家族のケアは家族がするものという考えのもと、ケアラー自身の心身の健康、仕事や学業などの社会生活などで様々な問題を抱えているにもかかわらず、社会的にケアラーを支援するしくみは不十分です。ケアラーの定義、自治体・区民・事業者の役割、どのように支援していくかなどを明記したケアラー支援条例の制定を求めましたが、「新たに条例制定する考えはない」と答弁しました。

行政計画に関心が向くような言葉のチョイスを

今年(2021年)最も話題となった言葉を選ぶ新語・流行語大賞に「ヤングケアラー」がノミネートされました。

私たちは、2020年度に厚労省と文科省が連携して実施したヤングケアラー調査を踏まえ、今年度策定の高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画、障害者計画に「ヤングケアラー」という文言を明記するよう提案しました。しかし、昨年度までの議会質疑では「ヤングケラー」を「若年の介護者」と言い換え、かたくなに「ヤングケアラー」という言葉を使わないようにしていた印象です。

社会的にも認知された言葉を使うことで、区民の理解も深まるのではないかと考えます。さらに、区長の所信表明でも「ヤングケアラー支援」に言及しているのに、今年度からの計画になぜ「ヤングケアラー」を使わなかったのか、残念でなりません。

ヤングケアラー支援についての今後の取り組みに注視していきます。

みなさまからのご提案やご意見をお寄せください。