住まいは生きる基本 住まいの貧困をなくす施策を

1年以上にわたる新型コロナウイルス感染症対策としての自粛要請は、経済の停滞を招き、3回目の緊急事態宣言とさらなる延長で経済的な格差は深刻度を増しています。

困窮者支援に取り組む団体の代表は、経済格差、働く世代の困窮は、実はリーマンショック以降続いている問題であり、「社会の底が抜け続けているのだ」と指摘しています。

ネットカフェを住まいとして、就労し何とか暮らしていた人が少なくないことが、1年前の初回の緊急事態宣言でネットカフェの休業によって明らかになりました。

また、女性が低家賃で利用できるとインターネット上で盛んに広告しているシェアハウスは、家賃滞納で即退去を迫られる契約になっているところが多く、新型コロナによる減収が住まいの喪失につながりかねません。

5月19日、「住まいの貧困をなくすー家賃補助の実現、公共住宅重視へ転換を!」と題する院内集会に参加しました。
開催団体は、「国民の住まいを守る全国連絡会(住まい連)」「日本住宅会議・関東会議」「住まいの貧困に取り組むネットワーク(住まいの貧困ネット)」です。

住宅支援は住居確保給付金だけで良いのか?

新型コロナによる減収で家賃の支払いが厳しい借家人への支援策として、住居確保給付金制度が注目されました。
本来の制度の対象は、「失業して家賃が支払えなくなった人」でしたが、コロナ禍を経て「失業していなくても休業や収入が激減した人」に拡大しました。
厚労相の資料によると、2020年度に全国で住居確保給付金の申請は15万件を超え、支給決定は13万5000件。従前の支給実績の20倍を超えているそうです。
練馬区では、2019年度の利用者は62件だったのが、2020年度は5,100件(延べ数※)でした。
(※支給は3か月間だが、新型コロナの影響が長引いているため延長申請が可能になっているので、延べ利用者数としてカウント。利用者の6割が延長している)

一方、持ち家であっても住宅ローンが払えなくなれば、住み慣れた住居を手離さざるを得ないケースも生じています。

住生活基本計画が見直されたが・・

今年3月、「令和の新たな時代における住宅政策の指針」として「住生活基本計画(2021~2030年度)」が閣議決定されました。

国土交通省の発表文書より
ポイント(1)
社会環境の変化を踏まえた、新たな日常や豪雨災害等に対応した施策
・新たな日常に対応した二地域居住棟の住まいの多様化、柔軟化の推進
・安全な住宅・住宅地の形成、被災者の住まいの早急な確保
ポイント(2)
2050年カーボンニュートラルの実現に向けた施策
・長期優良住宅やZEFストックの拡充、LCCM住宅の普及促進
・住宅の省エネ基準の義務化や省エネ性能表示に関する規制など更なる規制の強化

国はこの計画に基づき「一人ひとりが真に豊かさを実感できる住生活の実現に取り組む」と示されています。

しかし、集会では、
「情勢の認識においてコロナ禍の住宅困窮が見えていないのではないか」
「住生活基本計画は、社会保障としての居住保障の側面が弱い」
さらには、「感染症の拡大で住まいの確保が危ぶまれているなか、この計画はお金のある人のため、ハウスメーカーの仕事を作るためとしか見えない」との指摘が相次ぎました。

新型コロナ災害を教訓に「家を失わない」住宅政策を

「コロナ禍の生活苦と住まいの貧困ー求められる政策は」がテーマの、稲葉剛さんと雨宮処凛さんの対談で最も印象に残ったのは、
これまでたくさんの女性相談の貧困問題は、DVなどに起因する(家族を頼れない、暴力から逃れるために転居し仕事を辞めざるを得ないなど)ものがほとんどだったが、コロナ後は失業のみを理由にした女性のホームレス問題が出現した
という雨宮さんの言葉です。

雨宮さん(左)と稲葉さんの対談は、住まいの貧困だけでなく、クレジットカードなどの電子決済があたりまえの社会の問題点など多岐にわたった

住まいが無ければ、健康的な生活を送ることはもちろん、安定した仕事を探すことは困難です。
公営住宅の増設や公営住宅並みの家賃補助などだれもが安心して暮らす住宅施策が求められています。
増え続ける空家の活用は「容易ではない」とほとんど進みませんが、住宅施策として真剣に取り組む時ではないでしょうか。

住まいは生きる基本
居住の権利に根差す住宅政策と福祉政策の連携が必要です。

東京公社住宅協議会を代表してスピーチした小山謙一さん(左)は、光が丘在住。「暮らし何でも相談室」など住民の暮らしを支えるためにボランティア活動しています。最近では、新型コロナワクチン接種の予約のお手伝いも。