「新型コロナと政治~隠れみのに使われた『専門家』~」講演会報告

2020年、年明け間もなく、新型コロナウイルス感染症の報道が始まり、一斉休校、緊急事態宣言、外出自粛、それに伴う経済活動の停滞など、この間私たちの暮らしは翻弄されてきました。

感染症蔓延から半年以上経過しても収束の兆しが見えないのに、「GoToトラベル」など、私たちの不安に向き合わず経済政策を推し進める政治に不信と不安が募るばかり。

科学的に解明してほしい頼みの専門家は政治家の言いなり、政治家は責任逃れのために専門家を利用しているようにしか見えず、イライラ、モヤモヤしていた頃に巡り合ったのが、朝日新聞の新藤宗幸さんのインタビュー記事「新型コロナ~政治と科学 専門家よ利用されるな」でした。

「コロナ禍は政治の問題」と考える人と共有したいと思い、新藤さんに講師をお願いして10月24日に講演会「新型コロナと政治~隠れみのに使われた『専門家』~」を開催しました。

「都合良い専門家」は以前から

政府が、未知のウイルスに対する科学的な助言を求めた専門家の顔ぶれは、政権に親和性が高く、助言機関の体裁を整えたとしか見えないと、行政学者として政府のあり方を長年注視してきた新藤さんは言います。

さらに、日本学術会議新会員の任命拒否の問題にも触れ、政権の意向に反する専門家を排除する姿勢は、今に始まったわけではないと新藤さんは指摘しました。

東京電力福島第一原発事故後、大臣の指揮監督を受けずに独自に権限を行使できる「原子力規制委員会」を設立。委員5人のうち3人は原子力工学が専門で、いわゆる「原子力ムラ」の重鎮も含まれていました。原発の再稼働に慎重だった初期の委員の一人は再任しないことで、結果的に排除したのです。

新型コロナでいえば、医療、年金、福祉など現政権が推進する新自由主義改革のために、医師や看護師などの資格を持った医系技官が背後に押しやられてきたとのことです。

独立した専門家であれ

コロナ禍は、医療・保健、教育、働き方など、以前からの課題を露呈させました。混迷の時代だからこそ、専門知の徹底的な活用が必要です。しかし、有識者会議などに登用されることを名誉や評価されたと感じ、政権にすり寄る専門家が多いのではないかと懸念します。専門家には、多様な意見を聞き、合理的に判断し、情報を公開する、といった科学がよって立つ正当性が求められます。緊急事態宣言が出された時、国民の多くが自宅待機に応じたのは「8割の接触を減らすべき」という専門家の主張を受け入れたからではないでしょうか。

超高齢社会なのに改正のたびに後退する介護保険、「公共交通機関」と言いながら効率優先で不採算路線を切り捨てる交通行政など、新藤さんの話は多岐にわたりました。

市民の生活に目を向け、実態に基づいた政策立案のために、人権や公平、公正など普遍的な価値を重視して、政府に助言するのが専門家の役割です。
「政治が生活を良くする道具」になるように、私たち自身が「政治と専門家」の適切な関係を求めていかなければならないと認識しました。

講演会を終えて。右から山内れい子都議、きみがき圭子、新藤宗幸さん、やない