新しい生活様式を提案するなら、羽田新ルートも見直しを

羽田新ルートの運用が始まって早2か月。新型コロナウイルス感染拡大で運休と減便が相次ぎ、計画の90%減の運行状況です。

練馬区議会に提出されていた、羽田新ルートに関する2件の陳情が、5月26日の都市整備委員会で審議され不採択となってしまいました。
委員会では、「前定例会で議員提案した意見書を国に出した」「基準に従って運用が始まっている」など、すでに陳情が無効であるかのような発言があり、区民に向き合う姿勢が欠けていると感じました。

6月1日、区議会第2回定例会の初日に、2件の陳情を区議会として採択することに賛成(不採択にした委員長報告に反対)する討論をおこないました。

以下、討論原稿です。(映像はこちら。6月1日の55分頃から発言します

生活者ネットワークを代表して、陳情第12号・練馬区上空を飛ぶ羽田新ルートの中止撤回について、および陳情第63号・羽田空港新飛行経路実機飛行を踏まえた運用延期などを求めることについての願意に賛成の立場で討論を行います。

陳情第12号の要旨は「区民の理解を得られない羽田新ルートを中止撤回するよう、区議会から国に意見書を提出すること」、陳情第63号は「羽田新ルートの実機飛行確認で体感した騒音が大きく不安だったので、新飛行経路の運用開始を延期し、検証結果および住民の意見・要望を踏まえ、運用を見直すよう関係機関への働きかけ」を求めるものです。

第63号の陳情代表者に限らず、これまでの説明会などで示されていたデータやサウンドシミュレータの飛行音と、2月初めの実機飛行確認で体感した音や機影が大きく違ったと感じた区民は少なくありません。また、実機飛行確認で初めて新ルート計画を知った区民から、騒音や落下物を心配する声が複数届いていることはみなさんも認識していると思います。
このような区民の不安に応えるために、私たちは「羽田空港新飛行ルートの影響の検証と住民への説明を国に求める意見書」を前定例会で議員提案しました。しかし、同時に「羽田空港の機能強化と地域の良好な住環境の両立を求める意見書」が議員提案され、両立を求める意見書が議決されました。
議決された意見書には、新ルート運用のために制定した落下物防止対策基準を各事業者に徹底させること、と記されています。しかし、3月28日には、成田空港周辺で航空機のパネルの落下が報告されており、どんなに対策を講じても落下物はゼロにはならないことが証明されたといえます。

本格運用が始まった3月下旬は、新型コロナウイルスの世界的流行によって、航空各社は運休・減便をおこない、すでに、都心を飛行する航空機はかなり少ない状況でした。それでも、緊急事態宣言の下での自粛要請で、日中在宅することになったことで新ルート計画に気がついたり、あらためて騒音や落下物を心配する声があがっています。
これが、予定通りのフライト数であったなら、区民からの苦情はさらに増えていたのではないでしょうか。

新ルート計画のおもな目的であった東京オリンピック・パラリンピックの延期が決まったことに加え、新型コロナウイルスの世界的拡大により激減した航空需要が2019年の水準に回復するのは、国際線は2024年、国内線は2022年になるとの見通しをIATA(国際航空運送協会)が発表した今、国際線増便のための新ルートの運行は見直し、旧来の沖合からの着陸ルートに変更しても何の問題もないはずです。

さらに心配なのは、計画の80~90%の運休・減便、来日者数の4月実績で比較すると前年比99.9%減という現状は、航空各社の経営にも大きく影響を与えていることです。コスト削減を求められることになるであろう航空各社が、「世界でも類を見ない我が国独自の基準」と豪語する落下物防止対策基準に対応できるのか、人命にかかわる問題です。

 新型コロナウイルスの世界的流行により、世界中で人の行き来が激減し、訪日客をあてにした観光収入の危うさが露呈しました。
 国は、新型コロナウイルス蔓延防止のために新しい日常、生活様式を提案するだけでなく、これまでの社会のありよう見直し、命と暮らしを守る新しい政治へと大きく転換すべきです。
「決まってしまったのだから仕方がない」ではなく、社会状況の変化と住民の声に真摯に向き合うことが、住民に近い自治体議員に求められています。
つい先日、パキスタン航空機が住宅街に墜落し大勢の方が犠牲になりました。
落下物や墜落事故のリスクを回避するためにも、区議会として、都心上空を低空飛行する新ルートの見直しを求める陳情を採択すべきです。
以上で討論を終わります。

現在、「国土交通大臣に新ルートの運用中止を求める」署名活動や、「羽田新飛行ルートの賛否を問う品川区民投票条例」の制定を求める活動、新ルートに関する行政訴訟など、新型コロナウイルス感染拡大防止のために活動自粛を強いられるなか、関係自治体の住民が連携して取り組んでいます。
ご協力いただける方は、「お問い合わせ」からご連絡ください。

練馬区庁舎を挟んで、東西2ルートが設定されています。写真は東側のルートを夕日を浴びて飛行する機体。

西側ルートは、庁舎のほぼ真上を飛行します。