若者の政治参画 マイノリティの声も社会へ
2016年夏の参議院選挙から選挙権年齢が20歳以上から18歳以上に引き下げられました。練馬区の選挙結果を調べると、たとえば、54.50%の投票率だった昨年の衆議院選挙では、10歳代の投票率は46.52%、20歳代は33.85%、30歳代は43.84%、それ以降の年代は50%以上となっています。選挙権を得て初めての選挙は行くけれど、20代になると政治への参加が薄れてしまうのは何故でしょうか。
国内外の若者の政治参画の取り組みを学ぶ、アドボカシーカフェ「若者の政治参画 マイノリティの声も社会へ」に参加しました。
基調講演は、両角達平さんによる「スウェーデンに学ぶ若者参加を支える思想」、ゲストの愛知県新城市長の穂積亮次さんからは、今注目されている「若者議会」の取り組みの報告がありました。
若者の社会参加意識が高い国、スウェーデン
まず、20代の投票率を比較すると、日本が33.4%に対してスウェーデンはなんと、81%というデータがあります。選挙権・被選挙権は国政も地方選も18歳で、現在、16歳選挙権の導入を検討しているとのことです。当然、若い政治家も多く、最年少の国会議員は22歳、現政権の連立内閣24人中、20代の大臣が1人、30代の大臣が2人います。
スウェーデンでは、生徒会や社会科の授業、政党青年部などの「公式の場」、若者団体(NGO,スポーツ、趣味など)や余暇活動施設などの「余暇の場」、若者文化(流行り)やデモ・抗議行動、消費活動などの「その他の場」と若者の多様な社会参加の場があります。政治や地域の課題のみならず、生徒会や余暇の場においても「話し合い、意思表明、意思決定」をすることで、若者が地域の行政や政治家に影響を与える実践の場があるということのようです。さらに、約30億円の助成金を106の子ども・若者団体に拠出(2014)しているとのことです。
スウェーデンの若者政策の目標は「若者の影響力を高めること」で、この背景には「若者は社会の問題ではなく、社会のリソース(資源)」という考えがあります。
日本との大きな違いは、ワークライフバランスや「子どもの権利」が根付いていることだと感じました。
自治体若者政策ー新城市の挑戦
新城市は、2015年4月1日から「新城市若者条例・新城市若者議会条例」を制定し、「新城市を若者が活躍できるまちにする」という目標の下に「若者議会」が始まりました。
1000万円の予算をつけ、その予算の使い道を政策として若者自らが考えていくこと、さらにそれを市長に答申して、市議会の承認を得て現実に執行する、という一連のしくみやサイクルがつくられています。
新城市若者議会は、市内の高校生から20歳までの20名の委員と5名の市外委員、彼らをサポートする「メンター市民・職員(知識や経験に基づいて話しやすい雰囲気づくりや政策立案に必要な知識を提供する)」、「一般社団法人 若者議会連盟(若者議会の卒業生や関係者のつながりを維持し、全国に若者議会を普及させるために発足)」、事務局で構成されています。任期は1年で、約7か月間かけて立案した政策を市長に提案します。
練馬区を含む、全国の多くの子ども議会・若者議会は、教育委員会や子ども・青少年関連の部署が担当していますが、新城市では「まちづくり推進課 若者政策係」が担当しているのが大きな特徴です。
これまでに、図書館の自主学習スペースの拡充するなどの「図書館リノベーション事業」、おしゃべりを通して高齢者と若者が交流する機会をつくり高齢者の孤独や不安の軽減と若い世代の視野を広げる「おしゃべりチケット事業」など、第1期の2015年度には6事業が提案されました。事業によっては継続しているものもあるとのことです。
また、第1期生の委員ひとりは、27歳で市議会議員になったとのことです。市の職員になった卒業生もいるそうです。他にも、防災組織を立ち上げるなど「地域に貢献したい」と考える若者が増えているそうです。
「若者議会に1000万円の予算をつけることに対する議会、市民の反応はどうだったか」という質問に対して穂積市長は、「市を10地域に分けて1億円の予算をつける『地域自治区制度』によって、市民自治の土壌が育まれていることで、大きな抵抗はなかった。むしろ『若者議会』と名付けることが『議会軽視ではないか』という声があった」と答えました。
欧州議会の提言によると、「家庭、学校、職場、余暇活動、若者の活動で、民主主義を教えることを怠ると、若者は政治に対してひがみっぽくなり、投票率は下がり、政治家、政党、政治的な若者団体への不信感が募る。さらに、研究によると市民教育のない若者は、同調圧力により極端な思考に陥り、暴力的な政治活動をしやすくなる」そうです。
今の、日本はどうか?若者の意見が政治に反映されていると実感できる政治と、それを実現するための具体的な取り組みが必要だと思います。
そして、練馬区では子どもたちの考えが反映されたと実感できるような「子ども議会」のあり方を検討すべきではないでしょうか。