育児支援ヘルパーに求められる役割
区では、安定した児童の養育につなげることを目的に、産前・産後の体調不良等で家事や育児が困難な家庭を対象に家事援助者を派遣し、育児を支援する事業(育児支援ヘルパー事業)を実施しています。食事の支度、洗濯、掃除などの家事一般や乳児の沐浴の補助、兄弟の世話、母親の検診の付き添いなどがヘルパー事業としてあげられています。出産後に配布される「子育てスタート応援券」を利用することもできます。
2017年度は約20事業者が区と契約を結び、この事業を担っていました。
派遣するヘルパーには、保健師、看護士、保育士、介護職員初任者研修修了者などの資格が求められていました。対象の家庭に訪問して家事援助をおこなうことが主な業務内容のため、契約する事業者の大半は高齢者や障がい者の訪問介護を担っています。
介護保険事業を担う多くの事業者は、人材不足に悩まされているうえに、昨今の介護報酬の引き下げによって、経営努力も求められている状況です。
昨年の第3回定例会で育児支援ヘルパーに有資格者を要件とするなら、資格にふさわしい報酬を支払うべきと指摘しました。
たとえば、介護保険の家事援助は単純計算すると1時間約3,000円。これに対して育児支援ヘルパー事業の報酬は1,700円です。同じ時間帯に介護保険の家事援助と育児支援ヘルパー事業の家事援助の依頼があった場合、報酬が少ない事業を後回しにせざるを得ない実態が生まれています。事業者とすれば、高齢者や障がい者をヘルプする専門職が必要とされる仕事が受けられなくなる事態は避けたいと考えるのは当然です。
ある事業者は「私たちのような第三者が関わることで、子育ての孤立化や虐待の未然防止につながる可能性もあり、人手さえ確保できれば受けたい意義ある事業だ」と、断らざるを得ない苦しい胸の内を聞かせてくれました。
第3回定例会の区の答弁は、「利用状況に応じた資格要件について検討を進めているところ」ということでしたので、その後の検討状況を予算特別委員会で質問しました。
練馬子ども家庭支援センター答弁
これまでの育児支援ヘルパー事業の援助内容や援助実績を踏まえて見直しを行った。2018年度から資格要件を廃止し、事業者の中で適切な家事援助ができる職員を育成して派遣する。
と、大きな変更になることがわかりました。
育児支援ヘルパーは、家事援助のみならず、家庭の状況をみて利用者および子どもの心身の状態や生活状況の異変に気づき、子ども家庭支援センターにつなぐ、虐待の未然防止のための大きな役割を求められていると私は考えています。しかし、現在、育児支援ヘルパーを担っている方の多くは、介護の専門家ではあっても、虐待対応などの子育て支援に関する研修は通常は受けてきていません。
区は、事業の契約時に「子ども家庭支援センターとの連携について」というテーマで研修したようですが、契約説明会の主な出席者は事業の運営に関わる人で、実際に派遣する職員とは限りません。この研修をもって、人材育成を事業者任せにすべきではないと思います。
育児支援ヘルパーの資格要件が外れたことで、事業の質の低下を懸念します。安心して育児ができる、子どもが健やかに育つための環境整備のひとつとして、育児支援ヘルパー事業の役割は大きい。だからこそ、人材育成を事業者任せにせず区が支援することが必要です。