羽田空港機能強化 ~過密大都市を低空で飛行する~

 旅客機は、離陸時の約3分、着陸時の約8分間が非常に危険(不安定)な飛行状態と言われています。世界でもまれにみる過密都市の上空を、着陸態勢の旅客機が飛行する新たなルートをつくり、羽田空港の国際便を増便させる計画が進められています。

 現在、国交省が進めようとしている「羽田空港の機能強化」は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに訪日する海外からの観光客や、グローバル経済のなかで国際競争力を高めるために、羽田空港の国際便を増便させることです。既存の4本の滑走路を効率よく使用して、現在より約1.7倍の発着回数の増加が可能となる試算をしています。それによって、今までなかった、都心の上空を着陸態勢の飛行ルートが発生することになります。

国交省によると、成田空港周辺で航空機から落下した部品や氷の塊が見つかったケースは、過去10年間に18件と報道されています。直近では、2015年12月に翼に使われるゴムシールと金属板の落下事故がありました。1991年に成田空港に太平洋側から着陸する場合は洋上で車輪を出すように航空会社に指示を出したところ、90年に16件あった落下物は大きく減ったということです。成田での12月の例を見ると、空港から落下地点の距離は約7㎞。今回の羽田空港の機能強化によって、練馬区の上空を通る飛行ルートに当てはめると、品川周辺になるでしょうか。人も車も建物も密集した地域に落下すれば、たとえ小さい部品であっても人の命ににかかわる重大事故につながりかねません。経済最優先で安全を軽視することはゆるされません。

羽田空港機能強化について、かねてから危険性について指摘している、航空評論家の秀島一生氏を講師に学習会を開催(1月21日)したところ、この問題の大きさを改めて認識しました。説明資料では、練馬区上空に2本の飛行ルートが描かれていますが、当日の気象状況や飛行場の混雑状況などによって飛行ルートが大きく変わる場合もあること。世界でも類を見ない広範囲な人口密集地を低空で飛ぶこと。万が一の事故の時も逃げ場がないこと。成田では毎年複数件報告がある落下物のことなど、問題は深刻だと思います。さらに、空港や航空機の状況を判断し、空の交通整理をする管制官の過酷な労働環境や、規制緩和によって機体の整備にも影響が出ていることを知ることができました。

これまで国交省は、原則、飛行機は海から入り海に出ると約束していました。その原則を大きく覆すことになるこの計画に対して、騒音など航空路の影響が大きい大田区や品川区では、議会への陳情や国交省への要請行動など早くから市民による活動が起きています。4月17日(日)には品川区で計画の白紙撤回を求めるパレードが行われました。しかし、新たな飛行ルートの直下の自治体では、これまで2回のオープンハウス形式の説明会が開催されたものの、依然として周知が足りていません。羽田空港機能強化に関する問題をさまざまな角度から問いただし、理解を深めるために、国交省と関係住民が一堂に会する教室型の説明会が必要だと考えます。今のところ国は、今年の夏までに「環境影響に配慮した方策」を策定するとしていますが、立ち話のような説明会で見切り発車することが無いように国に対して引き続き強く要望していきたいと思います。

生活者ネットワークでは、国交省からのヒアリングを予定しています。羽田空港機能強化について、不安なことや疑問、ご意見をお寄せください。

講師の秀島一生さんを囲んで