オリンピックで東京のオアシスがなくなる!?
2020年東京オリンピック・パラリンピックは晴海埠頭に建設する選手村を中心に、半径8km以内に8割の会場が収まるコンパクトな会場配置計画がアピールポイントのひとつになっています。しかし、野鳥の生息地である葛西臨海公園にカヌー競技施設が建設される予定となり、自然破壊を懸念した見直しを求める声が上がっています。その声を受けて生活者ネットワークは日本野鳥の会の方のガイドで現地を見学してきました。
四半世紀かけて育んできた東京のオアシス
葛西沖地区は、かつて夏のアサリ・ハマグリ、冬の「葛西海苔」と活気あふれる豊かな漁場でした。しかし、高度経済成長にともなう東京湾の汚染と地盤沈下のよってすっかり破壊されてしまいました。葛西沖開発計画は「葛西の海岸や三枚洲を住処とする鳥や海の生き物を守り、人・水・緑が奏でる新しい街を作りたい」という多くの人たちの願いを受けて1985年に土地区画整理事業の一環として着手されました。
1989年の「葛西臨海公園」「葛西臨海水族園」の開園から観察を続けている日本野鳥の会は多い時には10万羽を超える渡り鳥の飛来や、貴重種を含む200種以上の鳥類を確認しています。そして鳥類の生息を支える昆虫、クモ類や樹木・草地・湿地が人工的に作られ、遠浅の海によって多様な生態系が再生してきていると説明を受けました。樹木の配置や水辺のつくりかたなど、この公園は生き物の生態を熟知した設計者によって、「生き物の聖地」として造られたということです。市民の想いと自然の再生力によって人工的に造られた自然は四半世紀をかけて市民に親しまれる「東京のオアシス」になったのです。
四半世紀かけて育んできた自然をオリンピックで破壊する!?
カヌースラロームのオリンピックコースは、長さ約300m、落差約5mの激流をつくるために、25mプールをおよそ30秒で一杯にするほどの水量を一気に流すといわれています。さらに、大量の水を循環させるための大量のエネルギーと巨大な貯水池が必要になるのです。葛西臨海公園の観覧車から海に向かって西南の部分が建設予定地になっています。東京都は「希少種の生態に影響はない」とする環境影響評価を示したといいますが、公園と周辺の海の環境が現在の生態系を維持する源になっていることは言うまでもありません。工事が始まっただけで生態系に多大な影響を与えます。日本野鳥の会は、一年半以上前から東京都との間で、競技場建設計画の見直しの交渉を行ってきました。その中で、建設中はもちろん、その後の甚大な自然破壊の影響を東京都はわかっていないのではないかと感じている、と言っていました。見学に行った日も、木立からは絶え間なく鳥のさえずりが聞こえ、浅瀬には何千羽の水鳥を観察できました。都会の中の生き物の楽園に、これ以上人間が介入してはいけないと強く感じました。四半世紀かけて育んできた自然をオリンピックの名の下に破壊してはいけません。
日本野鳥の会では、葛西臨海公園の環境を犠牲にしないために、カヌー競技施設計画の見直しを求める署名活動を呼びかけています。ぜひこちらから署名のご協力をお願いします。