「種子法廃止」を生活者と生産者をつなぐきっかけに
日本人の主食である米、パンの原料の小麦。私たちは種子(タネ)を主食に暮らしています。
今年4月、戦後長年にわたって稲・小麦・大豆の供給を守ってきた「主要農産物種子法(種子法)」が廃止されたことは、私たちの食卓にどう影響するのでしょうか。自ら無農薬米を栽培し「我が家の米は自給率100%」と言うジャーナリストで、練馬区在住の大江正章(ただあき)さんを講師に迎え7月17日に学習会を開催しました。
種子(タネ)は本来、人類共通の財産であり、世代を超えて受け継いでいくもの。ところが、高度経済成長期以降、生産者の自家採種から購入(しかも90 %以上が輸入)する時代へ移り、現在は「種子を抑えれば農業全体が押さえられる」アグリビジネスとなり、種子が投機の対象になっています。
病害虫や気候、食味や生産性向上など、地域に合った品種の育成・開発には長い年月を要します。
食の安全と食文化、農業を守るためには、日本の種子や地域で開発してきた新品種を守ることが重要です。
今の農業政策は、元経産官僚の農水相や、「農業を産業化し、農水省が要らなくなることが理想」とする官僚が牛耳る「農業破壊政策」が進行している状況だそうです。種子法廃止は、大企業のトップや新自由主義的な立場の有識者で構成される「規制改革推進会議」の下で進められてきたと聞くと、私たちの暮らしに影響ないわけがないと感じます。
種子法の下で病害虫や気候、食味や生産性向上など地域に合った品種の育成・開発を公的機関が担ってきたのは、地味で儲からないから。地域にとっては大切だが、需要が必ずしも多くない品種の開発と供給を民間企業に任せられるのだろうか。
多国籍企業の席巻や遺伝子組み換えイネの生産などに対して、危機感を募らすだけでなく、「何をどう作り、何を食べるか」生活者である私たち自身が決める「食べ物主権」と、農家が自家採種し、保存した種子を利用・交換・販売する「生産者の権利」を広げていくことが大切だと、大江正章さんは言います。
23区の中で最大の農地面積を有する練馬区。
年々生産者が減少する一方で、若手の生産者が活躍してきています。環境・働く人の人権・持続可能な価格保障など、どういう方向の農業が大切なのか、練馬で暮らす私たちが生産者と学び合って、将来世代に「農あるまち」を引き継いでいきたいと思います。