裁判官も苦笑~青梅IC訴訟~
7月19日、東京外かく環状道路・青梅街道インターチェンジ(以下、青梅IC)事業認可取消訴訟の「第13回口頭弁論」を傍聴してきました。
東京外環(関越~東名)では、全長約16㎞の間に、本線のシールドトンネルとジャンクション(以下、JCT)やインターチェンジ(以下、IC)からの連絡路のシールドトンネルを地下40m以深で繋ぐ、地中拡幅部が8か所あります。大深度の高圧力のなかで、地中シールドトンネル同士を非開削によって切り拡げる、地中拡幅部の工事は、「世界最大級の難工事」であることは、事業者である国も認めています。しかも、直径30mにもなる巨大トンネルは施工例が無く、いまだに工法も工期も確定していない状況です。
原告である住民側の弁護士は、シールド工法で施行された中央環状品川線と対比し、施工期間の設定に根拠がないことを指摘しました。外環に比べ、品川線は工事区間の距離が短く、外径も小さい(ということは、掘削される土の量も少ない)のに、事業施行期間が約9年です。しかし、外環の施行期間は2014年3月26日から2021年3月31日の7年間となっています。
工法も確定しておらず、根拠のない施行期間であるにもかかわらず、国が事業承認・認可をしたことは問題だ、というのが原告側の主張です。これを受けて、裁判官は「地中拡幅部の工法の概略くらいは決まっているんでしょ?」と被告である国に質問しました。ところが、被告側の弁護士3人は顔を見合わせたまま答えることができず、思わず裁判官も苦笑してしまうという場面がありました。弁護士の後ろの席には国土交通省の職員が控えているにもかかわらず、誰も反論ができなかったのです。
笑い事ではありません。こんないい加減な事業(と言っても過言ではないと感じました)に多額の税金が投入されようとしているのです。青梅ICにかかるコストは1000億円と言われていますが、困難な工法に加え東京五輪を控えて資材や人件費の高騰などもあり、2倍にも3倍にも膨れ上がる可能性があります。さらには、外環事業そのものにいったいいくらかかるのか、誰が責任を持って答えられるのでしょうか。
東名・中央・大泉JCTの予定地は、面積ベースで95%~98%の土地が買収済みで、場合によっては地上を開削してトンネルを連結させる工法に切り替える選択も可能な状況とのことです。青梅IC予定地の買収率は19%で、状況はまったく違います。退去を迫られる地権者だけではなく、大気汚染・騒音・振動などにさらされる近隣住民など多くの区民の不安をなくすためにも、少なくとも青梅ICの建設は白紙にすべきと強く感じました。