どうする 食と農業のこれから

2024年から2025年に起きた「米不足」と「価格高騰」は、米を主食とする私たちの暮らしに大きな影響を与えました。25年産米が出回れば「米騒動」が収束すると思いきや、1年以上経過した現在でも米の価格は高いままです。「令和の米騒動」の原因は何だったのか、不安定な食料供給に陥らないために農業政策に求めるべきことは何か。弁護士で元農林水産大臣を務めた山田正彦さんから学びました。

「米あまり」ではなかったのか⁉

 農水省の統計資料を見ると、すでに2021年から主食用米の生産量が消費量を下回っており、その差が年々拡大していることわかりました。2023年は生産が661万トンに対して消費量が705万トンで約40万トンの需要ギャップが生じています。

高温の影響やカメムシの発生によって精米するときに2~3%のくず米が出て、実際に流通できる量が減ったことも生産量の減少につながっているとのことですが、そもそも、農水省が作況指数を見誤ったのではないかと山田さんは指摘しました。

私たちは長らく「米あまり」と思わされてきたのではないかと感じました。

減反政策からの転換を

 現在、日本の水田は1200万トンの米の生産力があるにもかかわらず、減反政策で生産量は680万トン(2024年産主食用米)にまで落ち込んでいます。

 1960年代の日本の食料自給率は約80%でした。水田では米の収穫の後に麦を生産する「二毛作」を行い、その翌年は大豆を作る「輪作」が一般的でした。大豆を栽培することで窒素分が固定化され、化学肥料等を必要としない農業だったそうです。

 ところが、戦後、日本は米国の圧力によって米国の余剰農産物である小麦と大豆を低関税で輸入することになったことで、国内の農家は採算がとれず生産をやめざるを得ませんでした。さらに、1995年から始まったミニマムアクセス米の導入で毎年77万トンの外国産米を輸入しています。そのために国産米の生産量を減らさなければならず、農地の原則4割を減反する政策が長い間続いてきました。その結果が「令和の米騒動」です。

食もエネルギーも自立分散型の備蓄が必要

 記録的な高温やゲリラ豪雨などの異常気象による農産物の不作、戦争勃発などによって輸送が止まった場合、日本では7200万人が餓死する恐れがあるという研究があるそうです。

 中国はすでに国民の1年半分の食料を備蓄していますが、日本は1か月半分の備蓄しかないとのこと。また、スイスは憲法に食料安全保障条項を盛り込み、戦争など有事の際でも必要な物資を国民に提供できるよう予防的な措置をとると定めているそうです。

 大規模な災害などに備えて日本も食料とエネルギーの備蓄が必要だと山田さんは指摘しました。

生産者の所得補償と就農支援で持続可能な農業へ

 「若い人の6割は何らかの形で農業に従事したいと考えている」という調査報告があります(2022年トラストバンク地域創生ラボ)。しかし、現在の農家の収益は他産業に比べて著しく低く、パート労働者の平均時給が1249円なのに時間当たりの農業所得は63円という状況です。(出所:新聞「農民」2025年5月26日)

 欧州では農家収入の約90%、米国では約40%が国からの所得補償(補助金)だそうです。日本で2011年に戸別所得補償を実施して、下がり続けてきた農家の所得が1年間で17%上がった実績があります。

 また、農地を取得しやすいように農地法の規制を緩和する、すぐに収入を得ることが難しい新規就農者が自立できるまでの5年間15万円/月を支給する、など就農人口を増やす政策も必要です。

 農地には、食料供給だけでなく、洪水や土砂崩壊などを防止する防災、水質浄化や景観形成、生物多様性などの環境保全、教育など多面的な機能があります。農地の保全と農業は私たちの命の問題と直結していると考えます。

持続可能な農業のための農業政策を求めていきます。

東京・生活者ネットワーク「2026新春のつどい」で講師の山田正彦さんと(1月27日)