地域で仕事をつくる~協同労働の実践を聞く
今年の10月に労働者協同組合法が施行されたのを機に、法律や「協同労働」についての学習会が各地で開かれるようになりました。
私が加入する生協が企画した
「『私のまち』で働きたい人のためのフォーラム」に参加しました。
参加の理由は「企業組合あうん」の代表の荒川茂子さんのお話を伺いたかったから。
企業組合あうんは、1990年代のバブル崩壊をきっかけに、山谷で働く日雇い労働者が仕事を失い、野宿を余儀なくされた元野宿生活者を中心に「仕事おこし」の取り組みとして始まりました。現在、リサイクルショップ・便利屋・食堂の三つの事業を協同労働のしくみで運営しています。
リサイクルショップあうん
寄付を中心に2002年に開店したリサイクルショップ。
衣類、家具、家電、日常雑貨など多様な物品を販売しています。
お年寄りや外国籍の人など、地域に住むさまざまな人々の交流の場になっているそうです。また、生活保護利用者に向けて「家具什器費」の範囲内で家電などのパック販売もおこなっています。
便利屋あうん
便利屋事業は2003年に開始。
主な仕事は、引っ越し・住居の片づけ・居宅清掃
仕事の約半分は、生活保護受給者にかかわる福祉事務所からの依頼とのことで、生活困窮者の利用が多いそうです。
また、成年後見を行う機関や地域包括支援センターなどからの独居高齢者の住居の片づけ依頼が増加しているそうです。
介護ベッドを入れるスペースをつくるために片付けが必要となるケースなど、住居の片づけと居宅清掃のニーズは高いそうです。
どっこい食堂
名前の由来は「みんな参加の『どっこいどっこい』のつながり」
週に1回、手作りで優しい味のごはんが食べられる
世代も国籍も問わない、誰でも安心して居られる開かれた食堂
グループホームや地域団体へおかずの配達をしたり、地域イベントへ出店したりと、荒川で暮らす人々とのネットワークづくりにも取り組んでいます。
あうんのしくみ
働き手が出資者になり、一人ひとりが経営も労働も担う協同労働
使い捨てでない労働、生きがいと誇りある働き方の実践
2022年9月現在の組合員数は42名。
出資金は1万円ですが、無収入から入職する場合などは毎月1000円ずつ支出するケースもあります。
10~70代まで幅広く、野宿経験者、シングルマザー、不登校、ひきこもり、非正規雇用で不安定な職場から、などさまざまなバックグラウンドを持つ人々が、同一時間労働・同一賃金で働いています。
給与の決定や働き方、事業の見直しなど(原則)全員参加の月に1度の会議で決定します。
コロナ禍で30代スタッフが3名増員。全員女性というのはとても興味深いです。
彼女たちの考えや感想は
・コロナを機に、自分の仕事・暮らし方を振り返った⇒協同労働(同一賃金/対等な関係)に惹かれる
・多様な背景を持つ人とともに働き、多様な背景を持つ人がリサイクルショップや便利屋を利用する⇒1日1日が濃く充実している(感情が揺さぶられる)
・資本社会の中で、軸をぶらさずに事業を成り立たせていくことの難しさ、対等な関係で一緒に仕事をしていくことの難しさを感じている(でもそこが面白い!)
2007年に「企業組合」の法人格を取得したのは、当時、あうんの働き方にもっともフィットしていた法人格だったから。
協同労働を実践しているあうんとして、「労働者協同組合」への組織変更をどのように考えているか質問したところ、メリットデメリットなどをこれから研究し検討したいとのことでした。
地域に必要な仕事を起こし、協同労働を実践してきたあうん。
若いメンバーが古着分野に注目し、若者ならではの発信で収入増につなげるリサイクルショップ
複数の生協など連携団体の拡大と丁寧な作業に力を入れる便利屋事業
社会的な活動拠点を地域内に作り、誰もが安心して暮らし、支えあう地域づくりに取り組んでいくとのことです。
私自身も協同労働を実践してきましたので、とても共感でき、あらためて協同労働の意義を認識することができました。